翻刻
【右丁】
不経済(ふけいざい)散財(さんざい)寺(じ) 《割書:事(じ)に|用ゆ》算用(さんよう)道(だう)の抜道(ぬけみち)にあり
本尊(ほんぞん)借銭檀(しやくせんだん)寝者迦(ねじやか)如来(によらい) モウ呉無(くれぬ)損者(そんじや)一統(いつたう)散例(さんれい)の御作(おんさく)
身代(しんだい)質堂(しちどう)伽藍堂(がらんどう) 《割書:食哉(くふや)不食(くはず)なんと上人(しやうにん)再建(さいこん)|空腹(ひだる)ひ甚五郎(ぢんごらう)造立(ぞうりう)》
焼呑陀(やけのみだ)如来(によらい)の尊像(そんぞう) つまらん国(こく)より伝来(でんらい)
左(ひだ)り前(まへ)の身陀(みだ)如来(によらい) 《割書:嘘付(うそつき)弥次郎(やじらう)梵天(ぼんでん)国(こく)にて寄付(きふ)いくらかりが在(あつ)ても|平気(へいき)平左(へいざ)ヱ(へ)門(もん)万八(まんはち)にてとりあはずかうじ町(まち)の井戸(ゐど)より出現(しゆつげん)》
当寺(たうじ)は平気(へいき)にして見(み)かけた山(やま)もなく貧乏神(びんぼうがみ)の社(やしろ)を頭(あたま)の上(うへ)に
祀(まつ)りて祭礼(さいれい)盆暮(ぼんくれ)二季(にき)にあり後悔(こうくわい)道(だう)惣(そう)鎮守(ちんじゆ)とす是(これ)を後(あと)の祀(まつり)と云
本堂(ほんどう)は根接(ねつぎ)前(まへ)にて土蔵(どぞう)大破(たいは)に及(およ)びさいこん自力(じりき)に及(およ)びがたく
親類(しんるい)一同(いちどう)持寄(もちより)掛捨(かけずて)無尽(むじん)の寄進(きしん)あれども身代(しんだい)の大穴(おおあな)ふさぎ
かね焼石(やけいし)の水(みづ)忽(たちまち)かはき元(もと)の木阿弥(もくあみ)陀仏(だぶつ)こゝに出現(しゆつげん)あり係(かゝ)
【右丁枠外左下部】
道中二ヘン 十一
【左丁】
らん亭(てい)に僅(わづか)の縁(えん)に腰(こし)をかけても世間(せけん)は鬼門(きもん)八方(はつはう)ふさがり山門(さんもん)
の工面(くめん)も出来(でき)ず是非(ぜひ)なく分山(ぶんさん)に至(いた)り借銭(しやくせん)の淵(ふち)に落(おち)て浮(うか)む
瀬(せ)なし貧乏(びんぼう)性人(しやうにん)則(すなはち)これなり 雑物(ざふもつ)僅(わづか)次(つぎ)にしるす
略(りやく)縁起(えんぎ) 諸人(しよにん)けちりんの為(ため)しるす
抑(そも〳〵)当山(たうざん)の開基(かいき)は律儀(りちぎ)一編(いつへん)性人(しやうにん)子孫(しそん)の為(ため)に数年(すねん)難行(なんぎやう)苦(く)
行(ぎやう)して幾(いく)ばくの辛苦(しんく)を凌(しの)ぎ鼠色(ねずみいろ)のふんどしも手拭(てぬぐひ)を今朝(けさ)
となし古(ふる)布子(ぬのこ)の衣(ころも)などまとひ無益(むだ)の銭(ぜに)を遣(つか)はず生涯(しやうがい)絹(きぬ)を
肌身(はだみ)に付(つけ)ず稼(かせぎ)溜(ため)身上(しんしやう)の山(やま)未塵(みぢん)積(つも)りて忽(たちまち)間口(まぐち)七間半(しちけんはん)の本(ほん)
堂(どう)を造立(ざうりう)し給ふ夫(それ)より諸堂(しよどう)宝蔵(ほうざう)を建立(こんりう)ありて一代(いちだい)にして
金(かね)の番人(ばんにん)となり給ひ地面(ぢめん)三(さん)が庄(せう)の大地(たいち)を造立(ざうりう)し給ふその