東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

善悪道中記 - 翻刻

善悪道中記 - ページ 16

ページ: 16

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【右丁右上部から】 不経済(ふけいざい)散財(さんざい)事(じ)之(の)雑物(ざふもつ)【囲み線あり】 樽(たる)が大事(だいじ)【囲み線あり】 ○月(つき)雪(ゆき)花(はな)の   ながめは    おろか 何(なん)につけても  酒〳〵と呑(のむ)ことに 工面(くめん)めんぺきの尊像(そんぞう)なり   樽(たる)が損者(そんじや)といふ小買(こがひ)が          徳(とく)なり さけ【樽が大事の図内、樽に書かれている】 無多(むた)如来(によらい)の尊像(そんぞう)【囲み線あり】 ○宵(よひ)ごしの銭金(ぜにかね)はもたぬことを   ちかひて殻(から)【読ヵ】さし【注1】の百度(ひやくど)まいりを             よろこび給ふ 【無多如来の図、尊像の台座部分右に倒した形】 弘化二年■ 現金諸色之通 ■■月■■ ○樽(たる)が大事(だいじ)の尊像(そんぞう)は毎日(まいにち)大酒盛(おほさかもり)を   してんわう寺(じ)二日ゑひもちこしむかひ酒(さけ)のみだ    肴(さかな)らうそくの費(ついえ)をいとはずよたんぼう【注4】と也    酔(よつ)たうちの大気(たいき)【注2】むだづかひにあとさきの勘(かん)    定(ぢやう)考(かんがへ)もなくはてはけんくわ口論(こうろん)にかゝりて    家業(かげふ)をやすみ面目(めんぼく)を失(うし)なへども恥(はぢ)とも    おもはず頭痛(づつう)はちまきのくすりざんまい    のみなほしのぐてんどろたぼう【注5】となり費(ついえ)    だい一の尊像(そんぞう)なり吐血(とけつ)酒(しゆ)どく内(ない)そんの     わざはひはこれよりいだす ○奢(おごり)判官(はんぐわん)の守(まもり)本尊(ほぞん)身(み)のほどを弁(わきま)へずゑよう  ゑいぐわにみることきくこと人のする事はうら  やましく一寸(いつすん)さきはやみだによらいあればあり  きりのむかふみず女ぼう大しの御さくにて  物(もの)まへあてなしの借金(しやくきん)引当(ひきあて)間違(まちがひ)借(かり)ては  かへさぬかうじ町(まち)の井戸(ゐど)【注3】より出現(しゆつげん)ある    むだによらい南(な)むさんぼうかしても               かりてもなむ                 あみだぶつ 淫乱(いんらん)性人(しやうにん)の於文箱(おふみばこ)【囲み線あり】 【右丁枠外左下部】 道中二編 十三 【左丁右から】 証拠印(しやうこいん)の真蹟(しんせき)【囲み線あり】 証拠印(しやうこいん)のしんせきは書(かき)いれの有無(うむ)金子(きんす)借用(しやくよう) 證文(しやうもん)なり年月(としつき)つもりて利(り)に利のかさみつひに  かきいれをとられ人手(ひとで)にわたすたしかな證拠(しやうこ)の  印(いん)あるしんせきなり借金(しやくきん)は身代(しんだい)のらうがいやみ  にてだん〳〵にくのへるはてはほねがらみとなり  どうしやうかうしやうのしゆだんつきるやりくり  なんじうのしゆせきなりゆづうによりては          なくてならぬけいざいの             しやうこいんなり 【証拠印の真蹟図内】   借用申金子■■【事ヵ】 一金 三(?)百両也 ■■■■■ 右【以降判読できず】 ○身(み)から出(で)たさび刀(がたな)はみぬけの方剣(はうけん)と いふ奢(おごり)家(け)の重宝(ちやうはう)也 出(いで)てふたゝびもとの  さやへおさまらずすべてものごとさしつまり    たるとき壁(かべ)へ馬(うま)をのりかけ敵(てき)を  見て矢(や)をはぐごとき思慮(しりよ)なければ    善悪(ぜんあく)ともにわざはひのつるぎに     かゝりて身(み)のさびと            なるといへり ○いんらん性人(しやうにん)の御ふみと申はもとより   身(み)ぶん不相応(ふさうおう)の妾宅(せふたく)をしつらへ  女(をんな)ぐるひにおのれがすきの道(みち)へは金銀(きん〴〵)を  つかひすて口には田川や平清の【田川・平清=どちらも料理屋の名前】の美味 をくひあき身(み)には流行(りうかう)のそこいたり【注6】を  かざり僭上(せんしやう)【注7】につのりて身(み)のつとめに おこたり病(やまひ)をしやうじておんせん湯治(たうじ)に            遊山(ゆさん)をことゝすかぎりなき            さんざいをたのしみなじみの女(をんな)            よりのお文(ふみ)さまとたつとぶ           ふけいざいのひとつなり 身(み)から出(で)た錆刀(さびがたな)【囲み線あり】 【注1 からさし=空緡。銭をとめる為の結び目のない銭さし】 【注2 大気=度量がおおきいこと。気が大きくなること】 【注3 こうじ町の井戸=深いもののたとえとして使われる表現。麹町は高台で井戸が深かったことから】 【注4 よたんぼう=ようたんぼう(酔うたん坊)の変化した語。酒に酔っている人。酔っ払い。】 【注5 ぐでん泥田棒=「ぐでん」は酒に酔って正体のないさま。「泥田棒」は「泥田を棒で打つ」の略でめちゃくちゃな振る舞いをすることなので、酔ってめちゃくちゃをすること。】 【注6 底至り=外観は粗末だが、内実或は人目につかぬ所は手がこんで立派なこと。】 【注7 身分を越えて奢りたかぶること。】