翻刻
【右丁】
不取締(ふとりしまり)のなげ鎗(やり)【囲み線あり】
○不取締(ふとりしまり)なげ鎗(やり)は鼻毛(はなげ)山(やま)延太郎(のびたらう)所持(しよじ)なしたりといひつたふ
牝鶏(ひんけい)の昃(あした)【晨の誤】するは家(いへ)のつきる所(ところ)なり女(をんな)大将(たいしやう)と世(よ)によばれたる
かまど将軍(しやうぐん)物事(ものごと)行成(ゆきなり)と朝夕(あさゆふ)の合戦(かつせん)に用(もち)ひ高名(かうみやう)してその家(いへ)
滅亡(めつぼう)に及(およ)びたる家内(かない)第一(だいいち)の不調法(ふてうほふ)なり
三損(さんぞん)の身(み)だ【囲み線あり】
○三損(さんぞん)の身(み)だ如来(によらい)は○大酒(たいしゆ)の身(み)だ○突合(つきあい)の身(み)だ○やけの身(み)だ
いづれも大損(だいそん)にして難登(なんと)放隆(はうりう)事(じ)の什物(じうもの)なりしを生得(しやうとく)
大酒(たいしゆ)筆(ふで)をくわへて
終(つひ)によい〳〵よいと
ほめ給ひ
し
散損(さんぞん)の身だと
申すは
これなり
性得(しやうとく)大酒(たいしゆ)の筆(ふで)【囲み線あり】
【三損の身だ図内、掛け軸のしつらえの図柄として】
王緑
老松
【右丁枠外左下部】
道中二ヘン 十四
【左丁右上部】
親(おや)乃 撥(ばち)【囲み線あり】
○孝行(かう〳〵)をしたいじぶんにおやは
なしとかうくわいすれば
おやのばちを
しるべし
金(かね)乃 撥(ばち)【囲み線あり】
○とんでおごりをしらず
つかひはたしてめがさめれば
身はしやみせんのどうも
じやうがないといふとき
はじめてしれる
かねのばちなり
【親乃撥・金乃撥図内】
不孝
不知足
【左丁右下部】
○おやのばちはどらをうつに用ゆかたちは
すりこ木(ぎ)のごとく不孝(ふかう)の文字(もじ)あり
○金(かね)のばちは身上([し]んしやう)左(ひだ)り前(まへ)となり
身(み)をひくとき用ゆこれを
左身変(さみへん)のばちあたりといふみな
道楽(どうらく)寺(じ)の什物(じうもつ)にて散財(さんざい)の
名物(めいぶつ)なり
【左丁左上部】
分散(ぶんさん)二足(にそく)三門(さんもんの)額(がく)【囲み線あり】
【分散二足三門額図内】
馬鹿遅変報
■【臨ヵ】所当極欲
多文盲愁傷
【左丁左下部】
○この額(がく)は身上(しんしやう)破滅(はめつ)にいたり家財(かざい)のこらず
見たをし【注①】に売(うり)しろ【注②】なすきものをつぶしの直段(ねだん)に
して台所(だいどころ)道具(だうぐ)の宸筆(しんひつ)といひ伝ふ
五百(ごひやく)薬鑵(やくわん) 杓子(しやくし)如来(によらい) 寄喰(よりく)ふ物(もの) 手桶(ておけ)のみだ
あぶりこ【注③】のはそんかなあみだぶつ火箸(ひばし)の頭(かしら)も
ちん〳〵からといふ土瓶(どびん)さうづの作(さく)いまどやき
ほうろくのかたはれねつからふめぬをねをよみかへ
といふなんじうのがく也○文字(もんじ)はばかのろひへん
ほふりんしよとうごくよくだもんもうしうしやうとあり
【注① 極めて安く見積もること。又「見倒屋」の略で、品物を極めて安く評価して買い取るのを職業とする人。】
【注② 売って金銭に換える品物。】
【注③ あぶりこ=餅などを焼くときに使う鉄製の網】