翻刻
【右丁】
に十露盤(そろばん)橋(はし)有(あり)桁(けた)を渡(わた)り一割(いちわり)二割(にわり)の利徳(りとく)を以(もつ)て割掛(わりかけ)たる小判(こばん)の橋(はし)
なり傍(かたはら)に塵功木(ぢんこうき)あり此所(このところ)締縊(しめくゝり)悪(あし)き町並(まちなみ)あれば諸所(しよ〳〵)抜(ぬけ)みち
多(おほ)し○若(わかい)時(とき)の放蕩(どうらく)に遣(つか)つた借金(しやくきん)の古疵(ふるきず)に年賦(ねんふ)月賦(つきふ)の
引道(ひけみち)多(おほ)し○息子(むすこ)の夜泊(よどまりの)尻(しり)を拭(ぬぐ)ひ番頭(ばんとう)若者(わかいもの)の私慾金(くすねがね)
丁稚(でつち)の買喰(かひぐひ)に抜道(ぬけみち)あり○亭主(ていしゆ)酒(さけ)を呑(のめ)ば女房(にようばう)の寝酒(ねざけ)
お合(あい)お相手(あいて)で呑(のみ)ならひ終(つひ)に一升(いつしやう)二升(にしやう)の日酒(ひざけ)酔(よへ)ば万端(ばんたん)
なげやり台所(だいどころ)の炭(すみ)薪(まき)味噌(みそ)塩(しほ)にまで費(ついへ)多(おほ)く身上(しんしやう)の抜(ぬけ)
道(みち)となる女房(にようばう)は器量(きりやう)望(のぞみ)で貰(もら)はれ何一(なにひと)つ取得(とりえ)もなく横(よこ)の
ものを竪(たて)にもせず奢(おごり)日々(ひゞ)増長(ぞうちやう)して見(み)るもの欲(ほし)がり人(ひと)を羨(うらやみ)
仕立(したて)ものは足袋(たび)の繕(つくろ)ひまで人(ひと)にたのむ費(ついへ)多(おほ)く里(さと)の困窮(こんきう)
【右丁枠外左下部】
道中二ヘン 廿二
【左丁】
に引道(ひけみち)多(おほ)き身上(しんしやう)の抜道(ぬけみち)なり隠居(いんきよ)の佛(ほとけ)さんまい賽銭(さいせん)寄(き)
進(しん)の後生(ごしやう)願(ねが)ひ臍(へそ)くり金(かね)で間(ま)に合(あは)ず本家(ほんけ)の痛(いた)みとなる
抜道(ぬけみち)なり
好臭(こうしう)皆働(かいどう)色(いろ)の道(みち) 此所(このところ)は人間(にんげん)第一(だいいち)の迷所(めいしよ)多(おほ)し前編(ぜんへん)にくわし
恋(こひ)の山路(やまぢ)高低(たかびく)あるゆゑに高いも低(ひく)いも色(いろ)の道(みち)といふ恋(こい)の渕(ふち)あり
清水(せいすい)稀(まれ)にして泥水(どろみづ)多(おほ)し爰(こゝ)に首丈(くびたけ)はまれば浮(うか)む瀬(せ)なく一命(いちめい)
をもあやまつと言 恋(こひ)の棧梯(かけはし)には金銀(きん〴〵)人柱(ひとはしら)を用(もち)ゆ恋(こひ)の闇路(やみぢ)
に迷(まよ)へば行先(ゆくさき)は見へす逆(のぼ)せあがりて人の異見(いけん)も耳(みゝ)に入(いら)ず思(し)
案(あん)の外(ほか)の道筋(みちすじ)なり
○比翼鳥(ひよくのとり)○連理枝(れんりのえた)○結(むすぶ)の神(かみ)の社(やしろ)あり月老神(むすぶのかみ)と言《割書:○くわしくは前へんの|道中記にあり》