東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

善悪道中記 - 翻刻

善悪道中記 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

【右丁】 侭(まゝ)に棄(すつる)によしなく。己事(やむこと)を得(え)ず今歳(ことし)初春(はつはる)。新(あらた)に硯(すゞり)を発(ひらき)嗜好(すさめ)る故(ゆへ)に 拙(つたな)き筆(ふで)に稍(やや)責(せめ)を塞(ふたぎ)にき。従来(もとより)嬰児(こども)の為(ため)に。勧善懲悪(くわんぜんちやうあく)の一端(いつたん)とも ならん欤(か)と。善悪迷所図会(ぜんあくめいしよづゑ)と題(だい)して。梓(あづさ)を嗣(つぐ)事(こと)とはなりぬ。前(せん) 編(へん)と俱(とも)に高評(かうひやう)を給(たまはら)ば。書肆(ふみや)の僥倖(さいはい)ならんといふ事(こと)を。爰(こゝ)も名(めい) 所(しよ)の古跡(こせき)と聞(きこ)えし。晋子(しんし)基角(きかく)が隣(となり)なる。荻生(おぎふ)の井戸(ゐど)の邊(ほとり)かに すめる。 維時弘化二年 歳在乙巳春 稿成 同三年丙午春発兌 江戸(えど)楓川(もみぢがは)の市隠(しいん) 一筆庵主人戯誌 【丸い落款印 左右を白文と朱文に彫り分け】弌筆 道中二ヘン  一 【左丁上部】 凡(およそ)人間(にんげん)一生(いつしやう)の栄枯(ゑいこ)得失(とくしつ)貧福(ひんふく)は旅(たび)の 趣(おもむき)に彷彿(さもに)たり母(はゝ)の胎内(たいない)をかしまだちして より父(ちち)の恩(おん)の高(たか)き山(やま)に登(のぼ)り母(はは)の 恩(おん)の深(ふか)き海(うみ)を渉(わた)り善悪(ぜんあく)道中(とうちう)道(みち) 連(づれ)によりて途中(とちう)にして身(み)を過(あやま)つ正(しやう) 直(ぢき)正路(しやうろ)を往(ゆく)ものは終(つひ)に安楽(あんらく)の都(みやこ) に至(いた)る男女(なんによ)共(とも)に十九/里(り)二十五里の難(なん) 所(じよ)を越(こ)え三十三/里(り)四十二里四十里の 老(おい)の坂道(さかみち)にかゝり五十一の峠(とうげ)を越(こへ)て 爰(こゝ)に定宿(ぢやうやど)の泊(とまり)をもとめ六十一/里(り)に 小休(こやすみ)して古来(こらい)稀(まれ)なる七十/里(り)八十八 里に賀(が)を祝(しゆく)し百/里(り)を経(へ)て長寿(ちやうじゆ)の 絶頂(ぜつてう)に至(いた)る只(ただ)足(たる)ことを知(し)るものは路(ろ) 用(よう)の乏(とぼ)しきを思(おも)はず奢(おごる)ものは冨(とみ)に飽(あか)ずして 終(つひ)に困窮(こんきう)の境(さかい)に惑(まど)ふよく貧富(ひんふ)の際(さかい)を悟(さと)りて善悪(ぜんあく)の 道(みち)に迷(まよ)はず天命(てんめい)を楽(たのし)むときは本然(ほんぜん)の人(ひと)となる▲ ▲ゆめ〳〵 横道(よこみち)に いるべ からず 【左丁下部】 〽前編(ぜんへん)の道中(どうちう)で大概(たひかい) みち筋(すじ)はしれ ました 是(これ)からは 迷所(めいしよ)を くわしく ごらうじ まし 〽善悪(ぜんあく)の二筋(ふたす)【フリガナの「じ」部分虫食いで欠落しているように見える】 みちで 大(おほ)きに ひまどり よこ道さき道 ぬけ道に    かゝりて 大(おほ)そんをした         とかく たび人がまよふと      見へる