翻刻
【右丁】
ぞうやく馬(むま)【注①】にのりぬれば。うてとすゝま
ぬくらぼね【注②】や。ながはしゆくもとけしなく【注➂】
おかざき。ちりう。過(すき)ゆき。いかになる身の
はてぞとも。みやはとがめぬわたしもり。く
はな。四日 市(いち)これかとよ。此ところに。石(いし)やくし
といへるなんあり。これこそ我たのむ。本(ほん)
尊(そん)なり。さりながら。不 足(そく)ありつめたき
身も三 年(ねん)ゐれはあたゝまる。石(いし)やくしと
いふならは。二十 余年(よねん)のくすしの功(こう)をへしに
いかにふつき【富貴】になし給はぬやにらみ聞
【左丁】
ていやそれはひが事なり。主従(しう〴〵)のもの
ともに、やくしのまもり目(め)あればこそ、今
にこじきとへたてあり、もしさもなく
は。おとこの小町(こまち)のなれのはてとなるべ
きを。たる事しらぬ竹斎 老(らう)。老子(らうし)の道(みち)に
たがへりといさめをなしつゝ。せうの【庄野】かめ山
はやを過、せきにきこえし。地蔵(ちそう)あり里
人のかたれるはむかしこのところに。ゑや
み【注④】こよなうはやり侍りしに。この地蔵に
いのりしその作善(させん)に堂(たう)を。つくりなをせし
【注① 雑役馬=乗用には使わないでいろいろな雑用に使う牝馬。】
【注② 鞍骨=馬の背に身体を固定させる装置。一般に鞍ともいう。】
【注➂ とけしなし=じれったい。もどかしい。】
【注④ えやみ=疫病。】