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【右丁】
事なし又此病 一国(いつこく)一郡(いちぐん)一邑(ひとむら)なべてわず煩(わづら)ひ或は家に
かふ所の鶏(にはとり)犬(いぬ)猫(ねこ)の類(たぐひ)まで其毒に染(そみ)伝へて此病を
生し或(あるひ)は此病 流布(るふ)する時は深山(しんざん)幽谷(ゆうこく)に隠(かく)れのがれ
その邪毒(じやどく)をさくれば多くはまぬがるゝ事なりしかれば
此 痘瘡(いも)は一般(いつはん)の時行(じかう)の疫癘(ゑきれい)の毒によらすんばある
べからずといへり古今(ここん)の名医(めいい)痘瘡(とうさう)の議論(ぎろん)まち〳〵な
れど此 孫朋来(そんほうらい)の説にしかず此論を以 至極(しごく)の道理と
しるべきなり
㊃痘瘡(いも)の病人(びやうにん)居所(おりどころ)しつらひやうの説
○痘瘡(いも)すでに一点(いつてん)あらはるゝ時にいたらばまづ一間(ひとま)な
る所をいかにも奇麗(きれい)に掃除(さうじ)して屏風(べうぶ)をひきまは
【左丁】
し乳香(にうかう)といふ薬を香をたくごとくに少つゝくべて
穢(けが)れ不浄(ふじやう)をさけ冬(ふゆ)の月には純帳(どんちやう)或は紙(し)帳の類(るい)を
たれて其外には炭(すみ)火を置(をき)て寒邪(かんじや)をふせぐべし
夏の月は蚊帳(かちやう)をたれて蝿(はい)や蚊(か)なんどの痘瘡(いも)の上に
とまる事を禁(きん)ずべきなり屏風(べうぶ)衣桁(いかう)に赤き衣類(いるい)をか
かそのちごにも赤き衣類を着(き)せしめ看(かん)病人もみ
な赤き衣類を着るへし痘(いも)の色(いろ)は赤(あか)きを好(よし)とす
る故なるべしすべてその間に穢れたる臭(か)をいむべし
毎朝(まいてう)汐(しほ)水をそゝぎ注連縄(しめなは)をひきて不浄(ふじやう)をさく
べきなり
㊄痘瘡(いも)に禁物(きんもつ)の説