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【右頁】
てはいにしへいまに傳(つた)はらずたゞ産婦(さんふ)にのみ氣(きづかい)をして
児子(ちご)は収婆(しうは)《割書:和俗に子とりといひ|子ぞへばゝといふ》に打まかせて置(おく)によりて
ひたすらに啼(なき)て口中の穢(けがれ)たる悪汁(あくじう)を咽(のんど)にのみ入る故
に多くは胎毒(たいどく)の病をまぬかれず《割書:啓益|》常(つね)にこゝろみに
中花(もろこし)のごとく児子生れ下るとそのまゝ口中を拭(ぬぐ)ふ法(はう)を
用るに甚(はなはだ)益(ゑき)多(おほ)しこれを日本の風俗(ふうぞく)になさしめんと
おもひ産婦(さんふ)ある家(いへ)にいたればかならず此事をしめす
心あらん人は予(よ)が志(こゝろざし)をつぎて世間(せけん)におしひろめ給へ
◯博愛心鑑(はくあいしんかん)といふ書(ふみ)に児子母の胎内にある時は母とその
氣を同しくしその呼吸(こきう)をともにして眼(まなこ)を開き口を
ひらくの事なしいかんぞ胎内の穢れたる悪汁を飲(のむ)事
【左頁】
あらんやと見えたり誠(まこと)にさあるべき事なりしかれども児子(ちご)
すでに分娩(ぶんめん)して道をもとめ子宮(こぶくろ)をわかち出る時に
いたりてははや口をひらくの理(り)あり生れ下る時にして
は猶更(なをさら)その穢毒(ゑどく)をふくみ飲(のむ)べきなりいまこゝろみに口中
を拭(ぬぐ)ふにかならず穢(けが)れたる悪汁(あくしう)多し又生れ下ていま
だ乳(ち)をのまぬさきに大便(だいべん)に穢毒を通ずるを見れば
胎内の穢毒をふくむといふ古人(こじん)の説(せつ)疑(うたが)ふべからざるべし
㊂児子生れて即時(そくじ)に用る薬剤(やくざい)の説(せつ)
◯児子生れ下るとそのまゝ黄連(わうれん)の法(はう)を用べし黄連《割書:二分》
甘草(かんざう)《割書:二分|五厘》絹(きぬ)につゝみ或(あるひ)は乳頭(ちまめ)の状(かたち)のやうにこしらへ
熱湯(あつゆ)にひたしこれを用ればその穢毒を吐出(はきいだ)すなり