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【右頁】
かくのことくせざればそのけがれたる毒氣(どくき)胸腹(むねはら)の間(あいだ)にとゞ
まり月日を経(へ)るにしたがひ驚風(きやうふう)の病となり或は惣身(そうみ)に
瘡(かさ)癤(ねぶと)を生し多くは頭面(かしらおもて)に瘡(かさ)出来て寒(かん)熱(ねつ)をなす
これを胎毒といふと集驗方(しうけんはう)といふ書(ふみ)に載(のせ)たり和俗(わぞく)胎毒(たいどく)
ふき出て頭に瘡を生し冑(かぶと)を戴(いたゞ)きたるやうなるもの
をくさといふなり
◯日本の國風(こくふう)にて児子生れ下るとそのまゝ蜜薬(みつぐすり)と云
法を用るなり俗(ぞく)にあまものといふその法 款冬(くはんどう)の根(ね)少ば
かり打くだき其草少ばかりを入れ或は蜂蜜(はちみつ)少ばかり
をくはへて絹(きぬ)につゝみ或は乳頭(ちまめ)の状(かたち)のごとくこしらへ児子
の口中にそゝき入るなり此事 中花(もろこし)の書(ふみ)に見へずといへ
【左頁】
どもしきりにこゝろみて驗(しるし)多し都鄙(とひ)【「みやこいなか」左ルビ】ともにする事な
りいづれの代より仕初(しそ)めたるにや《割書:啓益|》按ずるに 款冬(くはんどう)の根(ね)は
味(あぢはひ)苦(にか)しこれを用て口中 腹中(ふくちう)のけがれたる毒氣(とつき?)を吐(はき)出
す事 中花(もろこし)より傳(つた)へ來(き)たる黄連(わうれん)の法よりもその驗(しるし)はる
かにまされり以上の法に用る甘草(かんぞう)は生(なま)を用べし火にてあ
ぶるへからず款冬を倭俗(わぞく)やまぶきと心得たる者多しあ
やまりなり朗詠集(らうゑいしう)に款冬誤綻暮春風(くわんどうあやまつてぼしゆんのかせにほころぶ)といふ清慎公(せいしんこう)
の詩(し)よりあやまり來たるなるにや款冬を本草に考(かんがふ)るに
やまぶきにあらず其 圖(づ)も其 論(ろん)も平生(へいぜい)食(しよく)する所の蕗(ふき)の
事なり
◯児子(ちご)生れ下りて用る法に牛黄(ごわう)の法 硃蜜(しゆみつ)の法など