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【右丁】
悪症也 貫膿(くわんのう)の時は痘瘡(とうさう)しきりに脹起(ちやうき)によりて
すこしは痛(いたみ)出るものなりされ共きびしく痛(いたみ)て堪(たえ)
かたきほどなるは悪症としるべし
○貫膿の時 痘(いも)の色(いろ)紫黒(しこく)に変(へん)し煤(すゝ)のごとくなるは
死証なり急に筋余(つめ)《割書:平日人の手の爪(つめ)を切る時|あつめたくはへをくへき也》壱匁五分に
ても弐匁にても一服(いつふく)として常(つね)の薬をせんするごとく
にして用れは其色 即時(そくじ)によくなるものなり《割書:啓益》し
きりに試(こゝろみ)てしるしを得たるなり此方 築紫(つくし)の野人(やじん)
の伝(てん)なり
○貫膿の時しきりにその痘(いも)痒(かゆ)きものは悪証なり虚(きよ)
証(しやう)としるへし総(そう)【惣】じて貫膿の時節は虚実(きよじつ)をとはず
【左丁】
多くは針にてつくごとくにして痒(かゆ)きものなれば小
児必あやまつて搔破(かきやぶ)るにいたるなり起脹の時より
手に手巾(ておひ)をさして爪(つめ)の痘(いも)にあたらぬやうにすべし
痘(いも)を摩(なて)搔(かく)には兔(うさぎ)の手を用べきなり 本邦(ほんほう)の俗(ぞく)
多くは畜(たくは)へをく事なり
○貫膿の時より心を付て眼(まなこ)のうち鼻(はな)のうちなど
を念(ねん)を入て見るべし此所に多く出来る時は眼つぶれ
鼻ふさがりて生(むま)れつかぬ片輪(かたは)者になる多し能々
心得へきなり
○貫膿の時痘の色 紅紫(くれなひむらさき)にして乾(かは)き枯(かれ)て焦(こがれ)黒(くろき)に
変(へん)ずる者は毒(どく)さかんにして血(ち)凝(こる)なり必 膿(うみ)をなさずして