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【右丁】
補中益気湯(ほちうゑききたう)に連翹(れんきやう)酒黄芩(しゆわうこん)山梔子(さんしゝ)防風(ばうふう)を加へて用
べしその効(しるし)多し外には米泔水(こめのとぎしる)を炭火(すみび)にて煉(ねり)て黄(あめ)
牛(うし)の糞(ふん)を黒焼(くろやき)にして細末(さいまつ)してこれにまぜてつく
ればその瘡(かさ)愈(いゆ)るなりこれ築紫(つくし)の野人(やじん)の伝(でん)なり《割書:啓益》
つねにこゝろみてしるしをとるなり
○痂(ふた)落(おち)て後 膿(うみ)出て皮膚(ひふ)弱(よは)く瘢痕(かさあと)より汁(しる)出ある
ひは瘢痕(かさあと)魚(うを)の腸(はらわた)の水ぶくれのかたちのごとくなるに
黄牛(あめうし)の糞(ふん)を陰乾(かけぼし)にして細末(さいまつ)してつくればたち
まち愈(いゆ)るなりこれ秘蔵(ひさう)の事なり
○痘瘡(いも)愈(いへ)て後小児をして園中(そのゝうち)又は庭(には)に出て土座(とざ)
にて遊(あそ)ばしむべからす四五十日 過(すぎ)てもかならず変証(へんしやう)出て
【左丁】
急(きう)に死(し)するものなりこれを築紫(つくし)のかたにては螻蛄風(けらかぜ)
に逢(あふ)といふなり痘瘡(いも)の後四五十日も螻蛄(けら)を見る事
をいむなり此事 中花(もろこし)の書(ふみ)におゐて見ず又は京都(きやうと)東(とう)
武(ふ)などにてはかつて人のいはぬ事なれ共 築紫(つくし)の方(かた)
にてはまゝ多き事なり痘後(いもののち)は皮膚(ひふ)うすき故に土(ど)
気(き)などにふれをかさるゝ事悪きなるべしかならず螻(け)
蛄風(らかぜ)のみにあらず蚯蚓(みゝず)蛇(へび)百足(むかで)の類の悪虫(あくちう)をもさけ
いみたるがよろしかるべき也
○痘瘡の後 軽(かろ)きものは五十日 重(おも)きものは七十五日或
は百日のうち保養(ほうよう)慎(つゝし)むべし乳飲子(ちのみご)は乳母(めのと)のつゝし
みをろそかにすべからず三四歳よりは飲食(いんしよく)の慎(つし)み