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【右丁】
いふ姑息(こそく)とはしばらくやむるとよみて児子(ちご)の啼(なく)事
や機嫌(きげん)のそんじたるをしばらく甘(あま)きものなどあたへ
てやむる事なり一説(いつせつ)に姑(こ)は老女(らうぢよ)にてうばとよみ
息(そく)はやしなふとよめばうばそだてといふ事なり共いへり
児子(ちご)に食をあたふる時物かげ人の見ぬ所など又は
下々と一所にてかりにも食(しよく)せしむべからす父母(ふぼ)の前
にて食(しよく)しならはすべしいとけなき時より物かげに
て食しなるれば食にむかへばかならずよろこびいかりひ
としからぬものなり能々可心得事也
○王隠君(わうゐんくん)のいとけなき時 好(この)んて飴(あめ)を嗜(たし)まれけるに
或時(あるとき)飴(あめ)のうちに蚯蚓(みゝず)ありて頭(かしら)をひきて出るを見て
【左丁】
これより飴をくふ事なかりきひとゝなりて始(はしめ)て母(はゝ)
のたくみてかくし給へる事をしりぬ此事なくんばひ
たすら喰(くひ)て疳虫(かんのむし)を生し病をおこし又は死にいたる
へきにありかたき母の恩恵(おんけい)なりと保嬰論(ほうゑいろん)に見えたり
日本にてもかくのごときの事多けれは父母(ふほ)乳母(めのと)とも
に心をつけて食をあたへ食する時に作法(さはう)よく教(おしゆ)る
事第一とすべき事なり児子によりて左(ひだり)の手のきゝ
たる生れつきもありかならす箸(はし)を左(ひだり)の手にてとるも
のなり是もいとけなき時よりしゐて右にとる事を
教れはよのわざはみな左(ひだり)を用れ共 箸(はし)計(ばかり)は右にとる
ものなり是もそのまゝおけは長(おとな)になりても右にとる