← 前のページ
ページ 153 / 169
次のページ →
翻刻
【右丁】
事 叶(かな)はぬ類(たぐひ)の者多したゞ児子は我(わが)まゝならぬやうに
教(おし)ゆれば邪気(じやき)のなきものにしてひたふるならつて
性(せい)となりて不作法(ぶさはう)なる事なきものなり能々可心得
事也
○礼記(らいき)の内則(だいそく)に児子よく物をいへは男(おとこ)は唯(い)し女(おんな)は愈(ゆ)す
と見えたり男子(おのこゞ)の返事(へんじ)はすみやかにしてはつきりと
いひならはせ女子のこたへはゆるやかにしてやはらかにい
ひならはするの事なり
㊃和俗(わぞく)児子(ちご)に破魔弓(はまゆみ)羽子(はね)紙鳶(いかのぼり)竹馬(たけむま)殿事(とのごと)炊(まゝ)
事(ごと)の戯(たはむれ)をなさしむるの説
○毎年(まいねん)正月に四民(しみん)共に男子(おとこのこ)には破魔弓(はまゆみ)をもてあそ
【左丁】
ばしめて弓(ゆみ)射(い)る事をしらしむるなりわが 日本(にほん)の国風(こくふう)
は武(ぶ)を専(もつはら)とする事なれは治(おさま)れる世にも武(ぶ)を忘(わすれ)れ【衍】ざる
意(こゝろ)なるべし 日本(にほん)をさして中花(もろこし)より東夷(とうい)といふも
夷(い)の字(じ)は大(だい)に从(なら)【ママ 注】び弓(ゆみ)に从(なら)ぶといひて大弓(おほゆみ)と書なれは
日本の弓ほど大なる弓はなくしてその国風(こくふう)武(ぶ)を
たつとぶ事をしるべしいま児子をして破魔弓(はまゆみ)を
持(もち)てかけ廻(まは)りかけ走(はし)らしむれば熱(ねつ)ももれ病(やまひ)なく歩(ほ)
行(かう)健(すくやか)ならしむるの意(こゝろ)なるべし
○続博物志(ぞくはくぶつし)といふ書に春(はる)の時に紙鳶(しゑん)を作りて風にふ
かせ小児の戯(たはふ)れとなさしむる事は児をして空(そら)にむ
かひて気(き)をはき風にふかれて熱(ねつ)をもらさしめん
【注 从は従の本字にして「ならぶ」の義なし】