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【右丁】
市街(いちまち)に居(をり)給へば衒賈(けんか)とて物を商(あきな)ひ或はふり売(うり)を
するまねをのみ戯(たはふれ)とし給えり御母これまた子を置所
にあらずとて此 度(たび)は学宮(がくきう)とて学問(がくもん)する人をあつめて
教(をしゆ)る所の隣(となり)に居(をり)給へは孟軻(もうか)の戯(たはふ)れ事に儒者(じゆしや)の神(しん)
を祭(まつ)る真似(まね)をなし或は礼儀(れいぎ)をなすかたちのまねを
し給えり御母これを見給ひてこれ子をおく所なりと
て遂(つい)に此所に住(すみ)給ひけり是いとけなき子を教(をしゆ)る第
一の事なり
○孟子のいとけなき時 東隣(ひがしとなり)の家(いへ)に猪(ぶた)を殺(ころ)すは何にか
はするとたづね給へは御母きゝ給ひて戯れに汝(なんぢ)にあ
たえんとの事なりとの給ひけるが已(すで)に後悔(こうくはい)し給るい
【左丁】
とけなき子をあざむくは偽(いつはり)を教るの事なりとて市(いち)に
て猪肉(ぶたのにく)を買(かひ)て孟軻(もうか)にあたへ給へるなりケ様にそだ
てたまへるによりてひとゝなりて大賢(たいけん)亜聖(あせい)の徳(とく)
となり給へるなり
○司馬光(しばくわう)公(こう)五六歳の時 胡桃(くるみ)を弄(もてあそ)び給ふ光公の姉(あね)
あり胡桃(くるみ)の皮(かは)をさらんとし給へ共去事なし姉その
座(ざ)を立給ひたる跡(あと)にて一婢(ひとりのこしもと)をよびこれを去せら
る湯(ゆ)につけてその皮(かは)をさる姉(あね)来りて胡桃(くるみ)の皮は
誰(たれ)かさると問ひ給へは光公みづからその皮を脱去(もぬきさる)と
こたへ給ふ父(ちゝ)これを聞(きゝ)給ひて光公を訶(しかり)て小子(せうし)なん
ぞ偽(いつわり)をいふやと戒(いまし)め給えり此事いとけなき時の耳(みゝ)に