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【右丁】
教ゆるとおしへざるとによるなりことに教は先(まづ)入(いる)の
言(こと)を主(しゆ)とすと見えていとけなき耳(みゝ)によく聞(きゝ)おぼ
えたる事 一生涯(いつしやうがい)の徳義(とくぎ)となるものなればよき師(し)よ
き友(とも)をえらびて教(をしへ)しむべき事なり狸(たぬき)の竹(たけ)の輪(わ)を
くゞり猿(さる)の船(ふね)に棹(さほ)さし舞(まい)おどる類(たぐひ)みな教(をしへ)にしたが
ふなれは人なるを以 獣(けたもの)にだもしかざるべけんや
○手習(てならひ)の事 肝要(かんよう)なり手習の時 万事(ばんじ)作法(さはう)あしけれ
は一 代(だい)の所作(しよさ)みな不道(ぶだう)なり子細(しさい)は諸道(しよたう)を導(みちび)くことは
書(しよ)を以もとゝするの事なればなり
○手習 勤(つとめ)候事は朝(あさ)十返(しつへん)昼(ひる)三十返 晩(ばん)十返ならふべし
手本ひとつを十五日とさだめて五日に一へんつゝ清書(きよがき)
【左丁】
をなして三度めの清書(きよかき)を諳書(そらがき)にすべし《割書:諳書(あんしよ)とは中に|おほくて書事也》
和俗 近来(きんらい)童(わらは)をして手習師(てならひし)匠(しやう)にまかせて手習を
さする事なればその勤方(つとめかた)はその師匠(ししやう)の教(おしへ)にまかすべ
きなり又ちかき比は女(め)の童(わらは)をも七八歳より十二三歳
までは手習所につかはすなりこれはなはだ悪しき
風俗(ふうぞく)なり七歳よりは男子(なんし)と女子(によし)と席(せき)を同(おな)じく
すべからずとこそ古聖(こせい)のいましめ給ふにかく外へつか
わして男(お)の童(わらは)とひとつにまじはる事あるべからす元(もと)
より手習師匠もその事をさとりて男の童と
女の童とは間所を隔(へだて)て教(おしゆ)るといへ共その所せばけれ
ばひたすら男の童のなす所を見馴(みなれ)をのづとなれ