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【右丁】
うつりてあしきなり富家(ふうか)はもとよりさらなり貧(まづ)し
き人も心得べき事なり女の童はとにかくに内にをき
て外に出すべからす物書事も大かたに文(ふみ)のやりとり
さへ間(ま)のわたるほとならばしゐてよく書(かく)にも及(およぶ)まじ
き事なるべし
○朝(あした)には早(はや)く起(おき)て楊枝(やうじ)をもて口中(こうちう)をみがき手あらひ
口すゝぎ髪(かみ)をゆひ手水(てうづ)をつかひて卓(しよく)に向(むか)ふべし
○手習仕上りてのち筆のよごれたるをは双紙(さうし)にてぬぐひ
いケ(か)にも奇麗(きれい)にして筆(ふで)をも硯(すゞり)をも水(みづ)入をも押板(おしいた)
の上(うへ)にそれ〳〵あるべき所に置(をき)て押板(おしいた)を直(なを)し手水(てうづ)を
つかひ手(て)顔(かほ)に墨(すみ)の付たるやと鏡(かゞみ)を見て鬢(びん)をなを
【左丁】
させ扨そのゝちはいケ様なる遊(あそ)びをもなし諸芸(しよげい)をつと
むべきなり
○手習の時 不行儀(ふぎやうぎ)にして筆(ふで)三対(さんつい)六つをは六(む)所にな
げ捨(すて)水入をく所に墨(すみ)を置(をき)墨をおく所に水入をうつ
ぶけておき顔(かほ)や手に墨の付(つき)たるをもしらす丸腰(まるごし)
ながらかけ出し草履(そうり)を片々(かた〳〵)どちはき走(はし)りめぐる
ごとくにそだちたる童(わらんべ)は長(おとな)になりて奉公(はうこう)に出て
も主(しう)の目(め)をしのびぶ作法(さはう)なる事のみ多く種々(しゆ〴〵)の
外言(としごと)を云ひ我(わが)あやまりを傍輩(はうばい)にぬり科(とが)ひとつに
虚言(きよげん)を数八百(すはつひやく)もつくりてのがれんとするものなりこ
れみな手習の時に足を踏(ふみ)出したる事 僻(くせ)となりてかく