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【右丁】
のごとしよく〳〵手習の時の作法(さはう)をつゝしむべき事也
○ 読書(とくしよ)の事第一なり四書(ししよ)五経(ごきやう)小学(せうがく)近思録(きんしろく)等(とう)の書は
勿論(もちろん)よむべきなり其外 詩文(しぶん)の類(たぐひ)をも素読(そよみ)すべし
その品々(しな〴〵)は師伝(しでん)にまかすべし又その家(いへ)がら富貴(ふうき)貧(ひん)
賤(せん)にしたがひその童(わらんべ)の愚鈍(ぐどん)聡明(そうめい)にしたがふべし
○ 謡(うたひ)をならはしむべきなり謡(うたひ)は 日 本(ほん)の俗楽(ぞくがく)といひ
ながら小哥(こうた)浄瑠璃(じやうるり)の類の鄭声(ていせい)とは各別(かくべつ)にして
都(みやこ)鄙(ひな)共(とも)に符節(ふせつ)を合(あはせ)せたるがごとくにして相 替(かは)る事
なく古今(ここん)不易(ふゑき)の音楽(おんがく)なればしらぬはかたくななるべし
され共ひとへにかたぶきたるは猿楽(さるがく)にひとしく此 芸(げい)
によりては士(さむらい)は種々(しゆ〴〵)の難題(なんだい)を得 主君(しゆくん)へも不足(ふそく)をいひ
【左丁】
傍輩(はうばい)とも云分(いひぶん)を仕出(しいた)し身の大事にもおよびあたら
重代(ちうだい)の知行(ちぎやう)にもはなるゝ類多し商(あきびと)は此 芸(げい)を好(この)み
しゐてつとむればその家職(かしよく)をわすれ家(いへ)貧(まづしく)なり
て後には此 芸(げい)を云立(いひたて)にして猿楽(さるがく)の中に落(おつ)る類に
いたる器用(きよう)なりといへば親(おや)はその子の愛着(あいじやく)にひかれて世
になき者とおもひ人も誉(ほめ)などすればおぼえす此事を
好(この)み過(すぐ)る事なり此 芸(けい)に器用(きよう)たりともすき好むとも
大かたにしてやむべき事なり
○諸礼(しよれい)習(ならふ)べき事なり小笠原家(おがさはらけ)などにては八歳の時分
より素礼(すれい)百返(ひやくへん)と定(さだ)めて毎日ならはしむる事なり躾形(しつけがた)