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【右丁】
もとめて習(なら)はしむへきなり
○盤上(はんしやう)といふものは博奕(ばくゑき)の類にしてさして習(なら)ふべき
事にしもあらねど 本邦(ほんほう)の俗(ぞく)多く好(この)む所にして賓(ひん)
客(かく)をもうけ或(あるひ)は客(きやく)にまねかれたる時その事あるに石(いし)の
生死(いきしに)をも見分(みわけ)がたく駒(こ[ま])のきゝ道(みち)をもしらぬはむげに拙(つたな)
き事なれはしりたるがよきなり最明寺(さいみやうじ)殿(どの)のうたに
盤上(はんしやう)をさのみにすくはうつけもの
人のゑしやくにおりふしはよし
又おなじ哥に
基(ご)象戯(しやうぎ)にまけても笑(わら)ふ人ぞよき
まけばらたつる顔(かほ)は見苦(みぐる)し
【左丁】
とよみ給へば勝負(しやうぶ)をつのり又は脇(わき)より助言(じよごん)など
いふべからす盤上(ばんしやう)の助言(じよごん)により人をせかせて不 慮(りよ)に
云ぶんになりて打はたすに及ふ事などもあり殊に
双六(すごろく)は猶更(なをさら)好むべからす総【惣】じて盤上はしりてこのまぬ
をよしとするなり謡(うたひ)茶礼(ちやれい)盤上はいとけなき時に
習はねは年たけては習ひがたきものなり前髪(まへがみ)をも取
たる男(おとこ)の口うつしに謡(うたい)をならひ四つめごろし駒のきゝを
いふ事も恥(はづか)【耻は俗字】しき事におもひて一生涯(いつしやうがい)此事をしらず
その座(ざ)にいたれはよほどよき人物(じんぶつ)に見ゆる男(おとこ)の一(ひと)ちゞ
みになりたるもおかしき事なれは此 芸(げい)は殊更(ことさら)いとけ
なき時に少にてもならひておくべき事なり能々心得