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【右丁】
べき事也
○射(しや)《割書:弓いる|事をいふ》御(ぎよ)《割書:馬のる|事をいふ》の道 兵術(ひやうじゆつ)の諸芸(しよげい)は武家(ぶけ)の当務(たうむ)な
れはその品々(しな〴〵)をあげていふに及はす習はしむへく熟(しゆく)すべし
猶更(なをさら)武士(ぶし)のいとけなき時よりならふへきは刀(かたな)脇指(わきざし)の抜(ぬき)
形(かた)なるべし何(なに)ほど心やたけにおもふとも刀(かたな)抜(ぬく)わざをしら
ずんは何の用に立んや刀さしの刀ぬかずと俗(ぞく)の諺(ことはざ)に云
なり
○算用(さんよう)の事十歳ともならは習べきなり今時不満物じ
りの武士(ぶし)などは算用(さんよう)とは商売家(しやうばいか)の業(わざ)にして武士(ぶし)たら
んものゝすべき事にしもあらすなどいふ類多し是 僻(ひが)
事(こと)也むかし北条(ほうでう)の氏康(うぢやす)のいとけなき時 父(ちゝ)の氏綱(うぢつな)老功(らうこう)
【左丁】
の臣を召集(めしあつめ)て氏康(うちやす)已(すで)に十歳におよぶ何事の芸(げい)を
かならはしめんとの給へは大道寺(だいだうじ)といふ老功(らうこう)の臣(しん)申され
けるは算用(さんよう)をまづ御ならはせあるべしと云けれは近習(きんじう)
の若侍(わかざむらい)ども目(め)ひき鼻(はな)ひき笑(わらい)けるを氏綱(うぢつな)見給ひて何
を笑ふぞ大道寺が云所尤至極なり兵書(ひやうしよ)に兵(へい)を出す
には日に千金を費(ついや)すと説(と)き又は兵食(へいしよく)の多寡(たか)を算(さん)
すと見えたれは人に将(しやう)たらん者は算用をしらずしては
軍旅(ぐんりよ)の事 調(とゝのひ)がたかるへし大道寺此事をよく勘弁(かんべん)して
申たるなり吻(くちはきの)【ママ】黄(き)なる者のしる事にあらずとて氏康(うぢやす)の
芸(げい)の習(なら)ひはじめに算用(さんよう)をならはせられたると古老(こらう)の
物がたりに伝(つた)へるるその上 天文地理(てんもんちり)の学問(かくもん)をなし千