← 前のページ
ページ 166 / 169
次のページ →
翻刻
【右丁】
歳の日至(にちじ)日月の蝕(しよく)などゝ云事もみな算用を以しる
事なり士農工商(しのうこうしやう)共(とも)に算用(さんよう)をしらずして何事か成就(じやうじゆ)
すべき入る事をかぞへ出る事をはからざる者はかならず
家(いへ)を失(うしな)ふものなりしかはいへどいとけなき子の十露盤(そろばん)
はやく人の前にて算用 金銀(きん〴〵)利徳(りとく)売買(ばいばい)の事をいふは
見 苦(ぐる)しき事なり何事をならふとても内外の差別(しやべつ)ある
事なれば算用の事などは人前に押(おし)出して習(なら)ふ事
にしもあらず中花(もろこし)の聖人(せいじん)も十 歳(さい)にして書計(しよけい)を学(まな)
ぶとありて物書(ものかく)と算用とをならべて云応給へはゆる
かせにせんやされ共聖人の算用をおもてにし給ふ事
もなく氏康(うぢやす)諸芸(しよげい)の初(はじめ)に算用を習ひ給へど算用者
【左丁】
といふ事も算用だての事を云給ふ事も北条五代記に
も見えず一切の芸能(げいのう)はしりてしらぬといふ事ありそ
の芸をかくして入用の時取出すべきなり
○上にいふ所のごとき事を父母(ふぼ)心をつけてよく教(おしへ)入れは
長(おとな)になりてよきものになるなり武士(ぶし)は奉公に出て
も立身(りつしん)しその外の商農工(しやうのうこう)家(か)もみなほど〳〵に身
を立道を行ひ家(いへ)を起(おこ)し名をあげて父母をあらは
して孝道(かうだう)にかなふ事なり能々教べき事なり
○世間の父母その子の愛着(あいじやく)にひかれてわが子は何事
もよきとばかりおほえて誉(ほめ)そやし姑息(こそく)をもてそ
だつる類の者多しかく姑息(こそく)をもてぞだちたる児は