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【右丁】
地下(ぢけ)がゝりの風(ふう)とて極(きは)めて悪(あ)しき風俗(ふうぞく)となるなり
○地下(ぢげ)がゝりの風とは十歳の比より仮(かり)にもよき人に
付会(つきあい)善(よき)事を聞事を嫌(きら)ひ下ざまの小者 部屋(べや)にか
け込(こみ)小草履取(こざうりとり)をともなひかくれんぼうに鬼(おに)むさ
しはさみ象戯(しやうぎ)むめおりは浄瑠璃(じやうろり)本を引ひろげ
句切(くぎり)もあしく読(よみ)なして長田(おさだ)が聟(むこ)鎌田(かまだ)兵衛とある
所をおさ誰(たが)聟(むこ)か又兵衛とよみおぼえなましゐに
武士(ぶし)の子とて軍(いくさ)物語は好(このめ)ども記録(きろく)の端(はし)をもよまざ
れは金平(きんひら)は弁慶(べんけい)が弟 和田(わだ)の義盛(よしもり)の若ひ時 伊勢(いせ)の国
鈴鹿(すゞか)山で強盗(がうたう)をめされければこそ伊勢の三郎とも申
す頼政(よりまさ)の鵺(ぬえ)を射(い)られたは尼(あま)が崎(さき)での事なり兵庫(ひやうご)の
【左丁】
かみとぞ申けるとあれはなどゝいふ咄(はなし)のとりもつかぬ
事を跡先(あとさき)にかたりなし物をいへども片言(かたこと)ばかりに
て官(くわん)の宰相殿(さいしやうどの)をさんせうどのといひ形部(ぎやうぶ)をべう
ぶととなへ人の煩(わづらい)のくはくらんをはくらんといひ脈(みやく)のう
つをはにやくがうつといふ人のしかるをひかるといひ物の
すみをはすまといふよき人 聞(きゝ)てすまとはいはぬひかる
とはいはぬものなりしかるといひすみといへと教(おしゆ)れは
重(かさ)ねて謡(うたひ)をおしゆる時 光源氏(ひかるげんじ)をしかる源氏(げんじ)といひ
すまの浦(うら)かけてといふ所をすみの浦(うら)かけてとうたふ
それをしかればすまといへはすみといへとすみといへは
すまといへとしかる何共せんかたなきなどゝちいさき