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【右頁】
と見えたりこれによりて見れば 本邦も古来(こらい)は生れ
下るとそのまゝ浴すると斗もいふべからずされ共萬
の事時のよろしきにしたがひたるがよきなれはと時の風俗
によりて生れ下るとそのまゝ取挙(とりあげ)て洗ひたるがよき
なり其内に或は生子 虚弱(きよじやく)にして生れ下ると種々の
病ある類の児子は生(せい)〻(〳〵)子(し)の説にしたがひ児子の実する
をまち病 愈(いへ)て後 浴(ゆあみ)すべきなり
◯魯伯子(ろはくし)の説に初て生れたる児子を洗ふにはかならず
その背(せなか)を護(まもる)べしといへり背(せなか)は五藏の神(しん)のやどる所
なれば護るべしとなり今時の収婆(とりあけばゝ)はその理をさとさ
ずみだりにおのれが脛(はぎ)の上に児子を引のせてあら〳〵敷
【左頁】
手を以 背(せなか)にあたり甚しきものは湯腹(ゆはら)をもむなどと云て
盥(たらひ)のうちにて児子の腹(はら)をもみ背を押(お)す類(たくひ)ありは
なはだあしき事なり此事 始(はしめ)て洗(あら)ふ時のみにあらず平(へい)
生(ぜい)洗ふ時にも心を付べき事なり昔(むかし)仁宗皇帝(じんそうくわうてい)と申
奉る賢王(けんわう)は罪(つみ)ある者を杖(つへ)にてうつに背をうつ事なか
れと命(めい)じ給ふ罪(ざい)人とても臓神(ざうしん)をやぶる事をいたまし
め給ふにそ然れは初めて生れたる児子のいまた骨(ほね)も
かたちもかたまらぬものなれは随分(ずいぶん)やはらかに殊(こと)に背を
守(まも)りて洗うべき事なり
◯初生(しよせい)の児子を洗ふには随分手早く取廻(とりまは)したるがよ
きなり久しく浴する事なかれ夏冬の時はことさら外(くはう)【注】
【注 振り仮名は「くはう」とあるが、次コマに続く文字の熟語から「外邪」で振り仮名は「ぐわいじや」とあるところ。「う」は「い」の誤記だと思われる。意味は外部にある邪悪、害毒。またこれによってひき起こされる病気、災害。】