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【右頁】
婦人(ふじん)は血気(けつき)ともに不足(ふそく)するによりて乳汁も出がたし
ケ(か)様(やう)なる婦人其乳の出るをまちて飲(のま)しめんとせは児子(ちご)
をして餓死(うへし)すべしかくのごときの婦人は乳母(めのと)を撰(えら)
びて召(めし)つかひ児子を養育すべきなり一槩(いちがい)に心得(こゝろへ)
べからず
㊈乳母(めのと)を撰(えら)ぶの説
◯除春甫(しよしゆんぼ)の説に乳母を撰ふ事いたつて大切(たいせつ)なり其
乳を飲て盛長(せいちやう)し漸(やうや)く染(そむ)事久しければ乳母の生質(むまれつき)
心根(こころね)までも皆よく似(に)るものなりいはんや血気の薄(うす)き
厚(あつき)きをやこれを木(き)を接(つぐ)にたとふといへり誠(まこと)にことは
りにや接木(つぎき)の䑓木(だいき)かしくれは接穂(つきほ)も痩(やせ)るなり䑓(だい)
【左頁】
木 肥盛(ひせい)なれば接穂もよく盛長する事なりとしるべし
◯乳母を撰(えら)ぶ事◯第一 病者(ひやうじや)にして色(いろ)青白(あをしろ)く皮膚(ひふ)
も形體(けいたい)も憔悴(しやうすい)【「かじけ」左ルビ】したる女◯第二 狐臭(わきが)ある女◯第三代々
癩瘡(らいさう)ある家(いへ)の女◯第四 身中(しんぢう)瘡疥(さうかい)ある女《割書:瘡疥とはひぜん|がさこせがさかゆ》
《割書:がりの|の類》◯第五 揚梅瘡(ようばいさう)ある女◯第六𤹪(せむ)瘻(し)【注】の女◯第七 癭(こ)
瘤(ぶ)ある女◯第八 癲癇(てんかん)の病(やまひ)ある女◯第九 音聲(こへ)の濁(にごり)たる
女◯第十 髪(かみ)の毛(け)のすくなき女◯第十一 耳聾(つんぼ)の女◯第
十二 兎缺(いぐち)の女◯第十三 齄鼻(ざくろばな)の女◯第十四 吃(どもり)の女◯第十
五 痘痕(いものあと)ある女其外 五體不具(ごたいふぐ)の女《割書:俗にいふかたは |ものゝ事也》是等(これら)の類(たぐひ)の
女を乳母とすべからすと諸(もろ〳〵)の醫書(いしよ)に載(のせ)たり
◯司馬温公(しばおんこう)の説に乳母をえらぶ事かろ〳〵しくすべからず
【注 「𤹪」は「痀」に同じで、「痀」の義は「せむし」。音はどちらも「ク」。故に「𤹪」も「せむし」の意味になります。「瘻」は音が複数ある中、義「こぶ」に叶った音は「ル」です「𤹪瘻」は「せむし」の意で問題ないと思います。ちなみに「傴」は音「ウ」で義は「かがむ・せむし」です。】