東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

小児必用養育草 - 翻刻

小児必用養育草 - ページ 26

ページ: 26

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【右頁】 乳母よからざれば家(いへ)の法をやぶるのみにあらず養(やしな)ふ所の 児子をしてなす所の業(わざ)こと〴〵く乳母に似(に)るなりつゝ しむへしと云へり 日本にても乳母を撰(えら)ぶ事をろ そかにせずよく尋(たずね)問(とは)せて其(その)見掛(みかけ)よく乳汁(にうじう)も潤沢(じゆんたく)なる 女を撰みて乳母とすといへ共乳母は多くは賎家(いやしきいへ)より 出る者にして其 性(しやう)ひすかしく【注①】ねたまし心 奢(おごり)て怒安(いかりやす) しその上 大切(たいせつ)なる児子をそだつる事をゆだねをく事 なれば父母(ふぼ)も殊更(ことさら)要(よう)ある者におもひ大形の我まゝはゆる しをくによりてはひたふる【注②】奢([お]ごり)出来(でき)て家の法(ほう)を乱(みだす)に いたる能(よく)々心得べきなり ◯王肯堂(わうこうだう)の説に乳母(めのと)は氣血(けつき)共に盛(さか)んにして乳汁(にうじう)潤(じゆん) 【注①「ひすかしく」はシク活用の形容詞「ひすかし」の連用形のこと。むつかしいの意】【ひねくれている意では】 【注②「ひたふる」ただ一つの方向に強く片寄るさま。もっぱらそのことに集中するさま。いちず。ひたすら。の意】 【左頁】 沢(たく)にして其 生質(むまれつき)よき者をえらふべし乳母は常(つね)に飲食(いんしよく) を慎(つゝし)み色慾(しきよく)をおもふべからず房事(ぼうじ)をなすべからす乳母の 気血(きけつ)乳汁(にうじう)と化(くは)するなれは一切(いつさい)の事 慎(つゝし)み守(まも)るべきなりと 云へり《割書:啓益|》おもふに 日本にても冨貴(ふつき)の家(いへ)には乳母をえ らぶ事 法(ほう)のごとく其(その)つゝしみも法のごとく守らしめて児 子を養育(やういく)する事なり然れ共その内或は其理にくらき 事多しいかんとなれば乳母は多く卑賎(ひせん)【「いやしき」左ルビ】なる者にして 己(をのれ)が家に在(あり)て作法(さはう)行儀といふ事もなく衣類(いるい)も薄(うす)く 平生(へいぜい)の食(しよく)物も麁菜(そさい)ばかりを喰(くひ)萬とぼしく在(あり)つる者 俄(にはか)に徳(とく)つきて衣類は絹絮(きぬわた)に冨(とみ)て厚(あつ)く重(かさ)ね着(き)るに より其乳汁 熱(ねつ)を生じかへつて児子に害(がい)をなす又 食(しよく)