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【右頁】
ず夏(なつ)の時 熱(ねつ)したる乳を飲(のめ)は小児 吐逆(ときやく)をなす冬(ふゆ)の時
寒(かん)じたる乳を飲ば咳嗽(しはぶき)を生し痢病(りびやう)を患(うれ)ふる也
◯乳母(めのと)怒(いか)りて乳(ち)を飲しむれは小児上氣して驚風(きやうふう)
癲癇(てんかん)の病をなす
◯乳母 酒(さけ)に醉(ゑい)て乳をのましむれば児をして腹痛(はらいたむ)
◯懐妊(くはいにん)の乳を飲しむれは小児 痩(やせ)て色 黄(き)ばみ腹(はら)大きに
脚(あし)痿(なへ)しむ名付(なつけ)て魃(ばつ)病【注①】といふなり和俗(わぞく)をとみづはり
といふ也
◯乳母風にあたりて乳を飲しむれは児をして腹張(はらはり)
吐逆(ときやく)せしむ
◯乳母 夜露(よつゆ)にあたりて乳を飲(のま)しむれは嘔吐(あうとを)なさしむ
【注①「魃病」俗ニ云、ヲトミヅハリナリ、小兒、母ノ懷姙シテイル乳ヲノミテ、瘧利ノ如ク病ナリ、又魃ハ小鬼ナリ、姙婦惡神ノ氣ニヲカサレ、小兒、其乳ヲノミテ病ナリ 古事類苑 第25巻1513頁】
【左頁】
◯乳母食するとそのまゝ乳をあたゆれは色【ク+也】黄(き)ばみ疳(かん)
の虫を生し口臭(くちくさき)事をなす也
◯乳母 汗(あせ)してすなはち乳を飲しむれは疳の虫を生ずる也
◯乳母 温麪(しつめん)【「あつめん」ヵ】《割書:うんどん切麦|そばきりの類》を食して乳を飲しむれは亀(き)
胸亀背(きやうきはい)の病をなす和俗いふ所のせむしの事也
◯乳母 酸鹹(すくしはゝゆき)食物(しよくもつ)或(あるひ)は炙(あぶり)たる肉(にく)の類(たぐひ)を食して乳をあ
たゆれは渇(かわき)の病を生する也
◯乳母酒に酔(ゑい)風に中(あたり)て臥(ふし)し醒(さめ)て後乳を飲しむ
れは児をして音聲(こへ)を失(うしな)はしむる也
◯乳母 咳嗽(しはぶき)のある時乳をのましむれは児をして驚風(きやうふう)【注②】
喘痰(ぜんたん)の病をなす也乳母 薬(くすり)をのみてはやく愈(いや)すべし
【注②「驚風」漢方で、小児の脳脊髄膜炎および脳脊髄膜炎様の症状。脳水腫や癲癇も指したらしい。急驚風「陽癇」と慢驚「陰癇」とがある。】