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【右頁】
實(じつ)寒熱(かんねつ)を問(と)はず此 薬(くすり)を用て験(しるし)をとる事多し然共乳の出
ざるにも其 病症(びやうしやう)品(しな)多き事なれば上手の醫師(いし)を頼(たの)みて薬(くすり)を用ゆべきなり
十一【丸でかこむ】小児 衣類(いるい)の説(せつ)
◯千金偏に生れ子男ならば父(ちゝ)のふるき衣類(いるい)を用ひ女
子ならば母(はゝ)の古(ふる)き衣類を用てあらためてこしらへ直し
児子(ちご)に着(きす)べし或は年老(としおひ)たる人のふるき衣類をあら
ため作りて着せしむれは児をして命(いのち)長(なが)からしむ
新(あたらしき)なる衣類 絮(わた)の類(たぐひ)を用る事なかれ衣(ころも)を厚(あつく)く【く重複】きせて
熱(ねつ)せしむる事なかれ皮膚(ひふ)をやぶり面(おもて)に瘡(かさ)を生し或
は驚風(きやうふう)の病を生ずるなりと見えたり
◯小児の衣類は絹の類を用へからす礼(らい)記に童子(どうし)に裘(きう)
【左頁】
帛(はく)をきせず又 帛(きぬ)の襦袴(しゆこ)せずと見えたり裘(きう)とは皮(かは)に
てこしらへたるきる物なり日本にてはなき事也帛とは
きぬの事也 襦(しゆ)とは短(みじかき)衣(ころも)なりと註して和俗(わぞく)のいふ襦半(じゆばん)
肌着(はだぎ)などの類(たぐひ)なり袴とは肌(はだ)の下ばかまの事也 晦庵(くはいあん)の
朱子(しゆし)の註(ちう)に帛は大に温(あたゝか)にして陰氣(いんき)をやぶる小児(ちご)は
純陽(しゆんやう)のものとてもつはら陽氣(やうき)さかんなるものなれは
裘帛(きうはく)を着(き)せしめて熱(ねつ)をつゝむ事なかれ其上 幼(おさな)き
時より奢(おごり)の事をふせぐの教(をしへ)なり布(ぬの)を心して帛(きぬ)を
用る事なかれ富貴(ふうき)の家といふ共 綾(あや)羅(うすもの)錦(にしき)絨(けおり)を用事
なかれと見えたり
◯《割書:啓益|》按ずるに小児の衣類(いるい)夏(なつ)の時は勿論(もちろん)也 父母(ふぼ)の古(ふる)き