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【右頁】
蝿(はい)におかされぬやうにすべし乳母(めのと)は平生(へいせい)脇(わき)に添臥(そひぶし)して
あるべし児(ちご)をたゞひとり臥(ふさ)しむる事なかれ乳母(めのと)は寝(ね)ても
さめても児の事のみをおもひおもふてその半に心をゆだ
ねとゝむべきなり
◯保嬰論(ほうゑいろん)に小児の安(やす)からん事をおもはゞ三分(さんぶん)の飢(うへ)と寒(かん)と
を帯(おぶ)べしと見えたり徐春甫(じよしゆんほ)の説(せつ)には三分(さんぶん)の飢(うへ)と一分の寒(かん)
とをもとむべしと云(い)へり三分のうへ一分の寒とは十(とを)の物にし
て三つほとは食(しよく)をひかへ十の内にしてひとつほとは衣類(いるい)を
うすくせよとの事なり
◯巣元方(さうげんはう)の説(せつ)に天氣(てんき)和暖(くはだん)なる時分(じぶん)は乳母(めのと)児(ちこ)を抱(いだ)きて
風(かぜ)にふかせ日にあたらしむべし小児 其手(そのて)を動(うごか)し物を見し
【左頁】
る時は日のあたる所にて遊(あそ)び戯(たはふ)れさすべしかくのごとく
すれば氣血(きけつ)つよく肌(はだへ)も肉(にく)も硬(かた)くきびしくなりて風を
ひかず寒(かん)にあたる事なしといへり富貴(ふうき)の家(いへ)その児(ちご)を愛(あい)
し過(すご)し純帳緬帳(どんちやうめんちやう)のうちに衣服(いふく)をあつくかさねて風の
氣(け)日(ひ)の目(め)にもあはせぬやうにそだてたる児(ちこ)はその色(いろ)も黄(き)
ばみしらけ皮膚(ひふ)もうすくして風をひきやすしたとへは
日陰(ひかげ)に生(おひ)たる草(くさ)のごとく軟(やわらか)に弱(よはく)して風の氣(け)日(ひ)のめ
などにあへばもろくしほれやすきがごときをしるべし
◯萬全論(まんぜんろん)に田舎(いなか)のいやしき人の小児をそだつるに病(やまひ)と
いふ事なしこれをたとふるに深山(みやま)或(あるひ)は廣(ひろ)き野原(のばら)に生(おひ)
たる木(き)はたやすく合抱(だきまはす)ほどの大木(たいぼく)となり或(あるひ)は珍(めづら)ら【送り仮名の重複】しき果(このみ)【「くだもの」左ルビ】