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【右頁】
てあやしきかたちの鬼神(きしん)を見する事なかれ猿(さる)つかひ
傀儡子(てづしまはし)【注】の類(たぐひ)のおそろしき人形(にんぎやう)など見する事なかれ
あやしきかたちの鳥獣(とりけだもの)の類又はかたはものゝ乞食(こつじき)など見
苦(ぐる)しきものを見する事なかれ或(あるひ)は高(たか)き所に抱(いだ)きあ
げふかき井(い)のもとにのぞませふかきふちにむかひ流(なが)るゝ
川を見せ牛(うし)馬(むま)犬(いぬ)猫(ねこ)などを見せててづからいらはせ
牛馬の息(いき)にあたらせなどする事 甚(はなはだ)あしき事なり下
ざまの者は此理(このり)をしらず児をすかし愛(あい)するとて己(おのれ)が肩(かた)
に抱(いだ)きのせ高聲(たかごへ)をあげて笑(わら)ら【送り仮名の重複】ひのゝしりなどして児
を驚(おどろか)して病を生ずる事 多(おほ)し此事 乳母(めのと)にもかたはら
につきそふ人にも云(いひ)きかすべき事なり能〻心得べき事也
【注 「てずし(手呪師)」=てくぐつ(手傀儡)=手で人形をあやつること。】
【左頁】
◯千金論(せんきんろん)に夏(なつ)の時にいたらは赤(あか)き絹(きぬ)にて袋(ふくろ)をぬいて
杏仁(きやうにん)《割書:あんずのさねの|うちのみをいふ》七つ両方の尖(とがり)と皮(かは)とをさりて袋(ふくろ)の内(うち)に入
て児の衣(ころも)の領(ゑり)になり共 帯(おび)になり共くゝりつけて置(おく)べし
児(ちこ)雷(かみなり)の聲(こへ)を聞(きゝ)てもかつて驚(おどろく)事なしと見へたり日(に)
本(ほん)にても常(つね)にする事なりむかし築(つく)【筑】紫(し)太宰府(だざいふ)に
菅丞相(かんせうじやう)の流(なが)され給(たま)ひし時 御寵愛(ごてうあい)の梅(むめ)都(みやこ)の御 庭(には)に残(のこ)し
をき給ひしに御詠哥(ごゑいか)を感(かん)じて此 梅(むめ)一夜(ひとよ)のうちに築(つく)【筑】紫(し)
に飛來(とびきた)るよし云傳(いひつた)ふいまも社頭(しやとう)に一株(ひとかぶ)の梅に瑞籬(みつがき)を
して飛梅(とびむめ)となづけて神木(しんぼく)とす社僧(しやそう)検校坊(けんぎやうばう)といふ家(いへ)に
秘方(ひはう)を傳(つた)ふると云(いひ)て此 飛梅(とひむめ)の核(さね)をとりて封(ふう)じ梅守(むめのまもり)と
なづけて雷(かみなり)の災(わざはひ)をさくる守(まもり)とて諸國(しよこく)へもてはやすあり