東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

小児必用養育草 - 翻刻

小児必用養育草 - ページ 47

ページ: 47

翻刻

【右頁】 天神(てんじん)は雷(かみなり)となり給ふよしの俗説(ぞくせつ)あればこれに附会(ふくわい)する にや是梅の核(さね)杏(あんず)の核(さね)いづれも大形(おほかた)その類同しきをもて かく傳(つた)へ來(きた)るにや此梅の守(まもり)も児(ちご)におびさせてよろしかるべ きなりすべて小児は心氣(しんき)うすく物におびえやすければ 雷などの時は乳母(めのと)の懐(ふところ)にしかと抱(いだ)きて驚(おとろ)かせぬやうにすべ きなりかくいへば物に心えぬ愚(おろか)なる人はあまりに児を愛(あい)し すごし少ばかりの雷の時もはや驚きて蚊帳(かちやう)を釣(つり)戸棚(とだな) 長持(なかもち)のうちにかくすやうにするによりていよ〳〵児におそ ろしみをつけてそれをならつて性(せい)となりて長(おとな)となり ても少の雷にも色(いろ)を青(あお)くし少の電(いなびかり)にも肝(きも)をひやし て夏(なつ)の時 天(そら)くもりては人前(にんぜん)には出(いづ)る事ならぬ類の者(もの)多(おほ)し 【左頁】 糾(きう)〻(〳〵)たる武夫(ぶふ)の家(いへ)の小児(ちご)などをかくそだてなす事は さて〳〵おろかなる事なるへし能〻心得べき事なり ○わが日本は神國(しんこく)にして神(かみ)をうやまひたつとふを風(ふう)【「なら」左ルビ】 習(しう)【「わし」左ルビ】とすれは小児(ちこ)の時は氏神(うぢがみ)産神(うふすな)又はその外にも神の 守(まもり)とて封(ふう)じたる札(ふだ)やうの物を衣帯(ころもおび)にくゝりつけて置(をく) 事なりかくのごとくすれば邪気(じやき)悪魔(あくま)をさくといふ 児は心氣(しんき)薄(うす)くよはければ邪気もをかしやすきものなり 外(ほか)よりなす事にして害(がい)のなき事なればすべき事なり 然れ共 愚(をろか)なる人は此事をたゞ㐧一の事とおもひ巫(かんなぎ)をめ しあつめなどして児(ちこ)を見せ又は児の前にて祈祷(きとう)な どをさするによりて鈴(すゞ)の聲(こへ)錫杖(しやくじやう)の音(おと)などに驚(おどろき)き児