← 前のページ
ページ 49 / 169
次のページ →
翻刻
【右頁】
もみちて出る事 俗礼(ぞくれい)なりと見えたり 本邦(ほんほう)の風俗(ふうぞく)も
またかくのごとし或(あるひ)は和俗(わぞく)七日めに胎髪(たいはつ)を剃(そる)人もあり
よろしからぬ事也 大抵(たいてい)三十日めに胎髪を剃て産婦
血心(ちこゝろ)もなく健(すくやか)なる時はみづから抱(いだ)きて親族(しんぞく)にも見せ
しめ打よりて祝(いはふ)べき事なり
◯集驗方(しうけんはう)に生れ子はじめて髪(かみ)をそる時は暖(あたゝか)なるところにて
かぜをさけて剃(そる)べきなり剃て後 杏仁(きやうにん)《割書:あんずのさねの|うちのみなり》三つ皮(かは)
と尖(とがり)とをさり研(すり)くだき薄荷葉(はつかのは)三枚を入てすり合て胡(こ)
麻(ま)の油(あぶら)少ばかり入て頭(かしら)にぬれば風を引事なく又 頭(かしら)に
瘡(かさ)を生(せう)ずる事なしひとり初(はしめ)て剃時のみにあらず剃 度(たび)
ごとに此 法(はう)を用(もちゆ)べしと見えたり 本邦にては剃て後に
【左頁】
酒(さけ)をぬり又は天花粉(てんくはふん)をぬり又は胡麻(ごま)の油にてときて
ぬるもありいづれもよし
◯本邦の俗禮(ぞくれい)にて生子 男(おとこ)なれは三十二日 女子(によし)なれば三
十三日にあたる日を宮參(みやまいり)の日と定(さだ)め氏神又は産神(うふすな)に
詣(まう)でしむる事なり此事いづれの代(よ)より仕初(しそめ)たるやらん
いまだ考(かんが)えず宮參をなさば必 遠(とを)き神社(じんじや)に詣(まう)ずる事なかれ
近所(きんじよ)の産神に詣(まうで)しむべし乳母(めのと)の懐(ふところ)に能(よく)いだかしめていか
にも静(しづか)に籃輿(かご)をかゝせ高聲(たかごえ)なる事をいましめ風邪(ふうじや)に
あたらぬやうにして詣しむへし多くは児宮參の日より風
をひきあるひは乘物(のりもの)にふられて病(やまひ)を生(せう)ずる事あり能〻
心を付へき事なり