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【右頁】
糞(こゝ)といひ又 蟹(かに)ばこといふ此 黒(くろき)大 便(べん)沢山(たくさん)に通(つう)じたる小
児は無病(むびやう)なるものなりこれを蟹糞(かにこゝ)と名付(なづく)る事
は豊玉姫(とよたまひめ)彦波㶑武鸕鷀羽葺不合尊(ひこなきさたけうがやふきあはせずのみこと)を生給ふ時 海(うみ)
の神(かみ)の御 娘(むすめ)なれば御産房(おんうぶや)海(うみ)の濱(ほとり)なりけれは蟹(かに)來り
て皇子(みこ)の御 大便(だいべん)を喰(くひ)けるによりて掃守(かんもり)の連(むらじ)の遠(とを)つ
祖(をや)天忍人命(あまのをしひとのみこと)つかへ奉りて箒(はうき)を作(つく)りて蟹(かに)を拂(はら)ひ退(のけ)給
ふゆへに鋪役(しきもの)をつかさどり掃除(そうぢ)の事を職(しよく)として蟹守(かにもり)
と号(がう)す今世(いまのよ)の掃守(かもん)といふは蟹守(かにもり)の云替(いひかへ)なりと古語(こご)
拾遺(しうい)に見えたり又大便をこゝといふはこゝとは数(かず)多(おゝ)しとか
きてこゝらとよみて物の多き事をいふ大便は穢(けがら)はしき
もの多(おほ)く下るを以名付たるなり又大便をはこといふは
【左頁】
いにしへはさしたる箱(はこ)に大便をうけて取(とり)たるによりて
はこといふなり今時も曲物(わげもの)にてこしらへたるを丸(まる)といふの
類におなじ
◯李梴(りぜん)の説に小児の病多くは胎毒(たいどく)或は乳食(にうしよく)の致(いた)す所
なり外よりの風邪(ふうじや)寒邪(かんじや)の病は十にして一二なりと見えたり
《割書:啓益|》おもふに今時の小児は母の胎内(たいない)にある時其母 身持(みもち)あし
く厚味(こうみ)をたしみ色慾(しきよく)をおもひ房事(ばうじ)を犯(おか)すにより胎中(たいちう)
に𤍽(ねつ)毒(どく)多(おほ)き故其 氣(き)にあたり其上 小児(ちご)生れんとする時 子(こ)
宮(ふくろ)をわかち道をもとめて出るにはや其口あればのみ食(くら)
ふ心あり胎内の穢毒(けがれたるとく)を含(ふく)み又は生れ下る道路(たうろ)にて穢(けかれ)
たる物を飲(のみ)已(すで)に生れ下ていまだ取舉(とりあげ)ぬうちにまづその