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【右丁】
豊前に帰(かへ)るを聞(きゝ)て此 児(に)を中津(なかつ)につれ来りて予(よ)
に治(ぢ)をもとむその比此児はや十四 歳(さい)になりけれど八
九歳ばかりの子ほどに見えて頸(くび)短(みしか)く背骨(せぼね)さし出て
両足(りやうそく)と共(とも)に鶴(つる)の足(あし)のごとくやせて背(せなか)の十七八の椎(ずい)の所
にて座(ざ)するほどに見えて後(うしろ)に坐録(ざろく)やうの物を置(をき)ても
たれかゝりてのみありけり両の足を伸(のば)す事かなはず左(ひだり)
の足を下になし右の足を上になして打ちがへての
み座(ざ)しけりこゝろみにその足(あし)をとりて左右(さう)へ引わけ
てその間(あいだ)に枕(まくら)やうの物をはさみて置(をく)にしばらくは左(さ)
右(う)へ足わかれてあれ共少の間(ま)に左右の足ふるひ出て
はさみたる枕やうの物 誰(たれ)いらふ共なきに中にをどる
【左丁】
やうに成て飛出(とびいて)又 始(はしめ)のごとく左を下に右を上にな
して打ちがへてねぢれたるやうになるみづから
廃人(はいじん)【左ルビ:すゝろひと】ならん事をうれひて《割書:予》にむかひて涙(なみだ)をながす
《割書:予》膝を診(しん)し形(かたち)を見て此病 治(ぢ)すへししかれ共一両年
を経ずんは治すべからずいま一両年を経て此児十五六
歳に成て精気(せいき)つのりて声(こへ)の替(かは)る時に至らば全(まつた)く
愈(いゆ)べしその間 薬(くすり)を用ば少づゝ快(こゝちよ)くなるべしといひて一
方をあたふ 人参(にんじん) 白朮(びやくじゆつ) 当帰(たうき) 川芎(せんきう) 白芍薬(びやくしやくやく)
黄茋(わうぎ) 熟地黄(しゆくぢわう) 山茱萸(さんしゆゆ) 山薬(さんやく) 白茯苓(びやくぶくりやう) 鹿(ろく)
角膠(かくきやう) 亀板(きはん) 《割書:各二|十匁》 熟附子(じゆくぶし) 肉桂(につけい) 蒼茸子(そうにし) 海(かい)
桐皮(とうび) 木瓜(もくくは) 薏苡仁(よくいにん) 牛膝(ごしつ) 虎脛骨(こけいこつ) 穿山甲(せんさんこう)