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【右丁】
王隠君(わうゐんくん)の説に歯(は)のはゆる事 遅(おそき)は腎(じん)の不足(ふそく)なり
といへり丹渓(たんけい)の芎黄散(きうわうさん)によろし 熟地黄(じゆくぢわう) 川芎(せんきう)
当皈(たうき) 白芍(びやくしやく) 甘草(かんざう) 《割書:各二銭》 右 細末(さいまつ)して歯(は)
牙(げ)にすりぬるべしまた食(めし)のとり湯(ゆ)にて少(すこし)許づゝ服(ふく)
したるがよきなり
○小児 停耳(ていに)の症(しやう)とて耳(みゝ)より膿(うみ)を出して痛(いたみ)甚(はなはだ)し
きものあり和俗(わそく)耳(みゝ)だれといふ此症は多くは脾胃(ひゐ)の
気(き)滞(とゞこほ)るによりてなり藿香正気散(くわつかうしやうきさん)を用てよし
外より付 薬(ぐすり)など多く医書(いしよ)にものせたれ共 験(しるし)すくなき
ものなり五倍子(ごばいし)を黒焼(くろやき)にして胡麻(ごま)の油(あぶら)にてときて
耳(みゝ)の内に入たるがよき也
【左丁】
王隠君(わうゐんくん)の説に小児に八蒸十変(はちじやうしつへん)といふ事あり生れ
て三十二日に一変(いつへん)とて熱(ねつ)少出て乳(ち)をあまし大便(だいへん)
青(あを)く煩(わづら)はしきなりかくのごとく一蒸一変(いちじやういつへん)にあふごと
に小児 手足(てあし)を動(うこか)し物を見るにも智恵(ちゑ)つく事なり
前(まへ)のごとく三十二日六十四日とかそへて五百十二日に
変蒸(へんじやう)の事をはりて物をいひよく食(しよく)するなりと云
へり和俗(わぞく)これを智恵熱(ちゑぼとほり)といふあながちに三十二日め
にはかきらず少の事は薬を用るに及(をよ)はず生れつき盛(さか)
んなる小児は変蒸(へんじやう)のきざしあれ共外に見えず又
小児によりてその折からは必 熱(ねつ)さし出(いで)て煩(わづらは)しきも
ありされ共一両日過れは熱さむるものなり治(ぢ)せすし