翻刻
【右丁】
なんどに素人(しろうと)の手料理(てれうり)集(あつ)めたる
ところなれば識者(ものしりびと)その式法(しきはふ)なき
を咎(とが)むる事なかれ
一 寒中(くはんちう)二汁(にじう)七 菜(さい)の献立(こんだて)をしる
すといへども㊄㊂の印(しるし)を付て五
菜(さい)三菜をわかつ五の印(しるし)のみを
集(あつ)むるときは一汁(いちじう)五菜(ごさい)となる
三菜(さんさい)もこれに順(じゆん)じてしるべし
一 四季(しき)十二 段(だん)にわかつて其 献立(こんだて)を
なすといへども年(とし)々(〳〵)の寒暖(かんだん)に
【左丁】
よりて河海(かかい)の鱗(うろくず)はもとより山野(さんや)の
菓菜(くはさい)にいたるまで生熟(せいじゆく)の遅速(ちそく)
あり故(かるがゆへ)に月(つき)々(〳〵)わくるといへども前後(せんご)
を見合(みあは)せ用捨(やうしや)あるべし尤(もつとも)その
地(ち)の陰陽(いんよう)にしたがひ産(さん)ぶつに又
ふ同(どう)ありあるひは同し品(しな)にても至(いたつ)て
賞翫(しやうくはん)する処もあり又 却(かへつ)て馳走(ちさう)
にならざるもあり他邦(たはう)に至(いたり)ては其所(そのところ)
の風土(ふうと)にならひて作略(さりやく)あるべし