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コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百九十九號 明治三十二年十月各地災害圖會(前編之續) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百九十九號 明治三十二年十月各地災害圖會(前編之續) - ページ 11

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【右ページ上段】 信電話線切断四ケ所、同報知柱一本、煙突(えんとつ)一ケ所、道路破壊二 ケ所、墻塀二百ニ十五ケ所、樹木倒折(じゆもくたうせつ)百六本、坂道窪(さかみちくぼ)み三ケ 所。     〇小石川区 ●戸崎町百九番地東京時計株式会社の煙突一本。町田製薬会 社の煙突(えんとつ)二本、氷川下町東京製帽株式会社の煙突一本。又倉田石 鹸製造所の家屋一棟全潰し。大塚窪町七十四番地江川鉄工場の 家屋二棟全潰せり。しかれとも人畜には死傷なかりき。此外墻 塀の倒れしもの百十六ケ所、樹木の倒れしもの二百六十一本、電 話柱の倒(たふ)れしもの十七本、非常報知機柱の倒れしもの二本あ り。 ●馬丁狂人を水中に救ふ 新諏訪町二番地米商飯塚喜三郎は 暴風雨の為めに逆上し。突然家を出でたりしが。隆慶橋より水 中に吹落されしを。久我侯爵の馬丁森友一郎が之を救ひしが。 幸に負傷せさりしとぞ。     〇本郷区 ●帝国大学表門の破壊 帝国大学の表門は破壊され門内の樹 木中程より折れたるもの一本、脚気病室前の樹木二本倒る。 ●家屋飛で車を破潰す 白山町某の亜鉛葺屋根猛風に吹揚 けられ。四五|間程先(けんほどさ)きへ飛(と)ひ。荷車(にくるま)の上に落ちたる為め。一台 の荷車は全く破壊されたり。 ●神木中断せらる。 元町二丁目四十七番地々先きに在る銀杏 の大樹は。古来神木と称へて敬ひ居たるものなるが。是れも亦 中程より吹折(ふきお)れたり。 ●家屋の破潰 根津清水町五番地笹子せん所有の家屋一棟 と。向岡彌生町三番地製餡会社の物置全潰し。三組町廿八番地 川村金蔵所有の物置は半潰れとなれり。 【右ページ下段】 ●石垣潰る 三組町五十八番地々先きに在る。二十間許りの 石垣亦潰れぬ。 ●其他|破損家屋(はそんかおく)百三戸。墻塀(しやうへい)の破損二百六十ケ所顛倒電柱二本 倒折樹木(たうせつじゆもく)二百四十本、破壊門戸十四ケ所等にして。倒折樹木の 多(おほ)き場所(ばしよ)は。お茶の水橋近傍及(みづばしきんぼうおよ)び大学構内等なりし。     〇下谷区 ●上野公園の狼藉 区内の重なる被害箇所は。上野公園なる べし。同所(どうしよ)は入口(いりぐち)の西手の堤にありし樫の大木の倒れたるを始 めとして。石階を昇れは、秋色桜の西三間許り離れたる処に。凡 そ四抱へもあるべき二股の大銀杏樹一本。地上一間ばかりの股 際より裂け倒れ。梁川楼前藤の茶屋の藤棚清水堂東北隅の屋根 瓦を三四十枚吹落したり。         (挿画参看) ●摺鉢山の辺り美術協会上野パノラマ館など内部は知らず。 外面(ぐわいめん)だけは無事(むじ)に見えたれど、東照宮脇の鐘楼跡より動物園(どうぶつゑん)に 至るの道には高さ十|数間(すうけん)の老杉を首め。樫の大樹樅の古木打変 ぜて凡そ三十余本。いやが上に算を乱して折れ重なりたれは。 一時は通行(つうこう)も困難(こんなん)なりし。動物園、美術学校、博物館等は差し たる被害(ひがい)なく。博物館(はくぶつくわん)西手の茂林中には。六十有余本の倒木あ りてこれが為め陳列館附属の事務所一棟屋根を破壊せられたれ ど人畜の死傷はなかりき。 又帝国図書館に於ては。暴風(ばうふう)に特別室(とくべつしつ)の玻璃戸を破られ。雨は 室内(しつない)へ吹(ふ)き込(こ)みて。閲覧人は書籍を霑ほし。一時狼狽したるが 出納係浅見、文屋の二氏は、使丁を指図して。戸板を以て破口 を塞ぎ。纔かに雨水の奔注を防ぎたり。又同構内美術学校に接 近したる境の老樹挫折し。芝塘を破壊して。道路(どうろ)へ倒れ居たる を見たり。 ●区内の損害 は全潰家屋(ぜんくわいかおく)二戸、又空家(またあきや)の全潰は十一戸、半潰 【左ページ上段】 家屋三戸、破損家屋百三十戸、(内空家六戸)倒折樹木二百二十 六|本(ほん)、墻塀破損(しやうへいはそん)五十七ケ所煙突の顛倒せしもの六本、其他屋上 看板標燈等の破損は。挙げて数ふべからず。     〇浅草区 ●本区にては 家屋の全潰三戸、同破損十七戸、同半潰二十七 戸、物置全潰一ケ所、半潰物置六ケ所、家根全部の大破八十五ケ 所、同小破八百五十五ケ所、墻塀破壊(しやうへいはくわい)五十三ケ所、樹木倒(じゆもくたほれ)二百 余本なり。 ●吉原遊郭内 家屋破損(かおくはそん)十七戸、納屋(なや)二ケ所、揚屋町及び駆 黴院の門扉破損し、品川楼建築中(しながはらうけんちくちう)の土蔵(どうぞう)は半潰(はんくわい)せり。 ●劇場 浅草座は。其周囲の煉瓦大に破損し。殊に八間許り の所は殆ど全く崩壊したり。     〇本所区 ●区内の被害を挙れば 家屋全潰九戸、同不住六戸、同破損 百二十四戸、墻塀倒壊(しやうへいたふくわい)三百六十一ケ所、煙突顛倒(えんとつてんとう)二十七ケ所、 橋梁|破損(はそん)二ケ所、樹木倒れ八十三本、電柱破損三十六本、人力車 顛覆六台、又|伝馬船(てんまぶね)一|艘(さう)両国橋下にて沈没(ちんぼつ)せり。其の他重なる破 損は寿座の屋根二十余間|吹飛(ふきとば)され。中の郷八軒町なる日本製壜(にほんせいびん) 会社(くわいしや)にては烟筒七本破壊す (此の損害三千円)両国二州楼の大 屋根及び楼上の西洋台も亦大に破損せり。 ●負傷者 横川町百五十七番地|染物工場(そめものこうば)一棟全潰し。主人山 本松太郎及び雇人岡本平吉両人共重傷を蒙りたり。     〇深川区 ●家屋の破損及び工場の壊倒 佐賀町二丁目二番地山本喜助 所有の二階建家は。屋根を剥かれ。其の飛びたる瓦及び板等の 為めに永代橋筋の電話線切断せり。又中島町古市場十五番地河 竹富五郎所有の海苔製造所并萬年町一丁目一番地鈴木友次 【左ページ下段】 郎所有の土蔵破損(どぞうはそん)し。清住町浅野セメント工場一棟は壊倒せ り。 ●暴風雨中の出火 暴風雨の激しき際。仲町廿ニ番地の湯屋 より出火せしかば。一時は大騒ぎをなし。婦人小児(おんなこども)の泣(なき)き叫ぶ ものさへありて。非常の混雑(こんざつ)を極めたりしが。軈て消した留め るは不幸中の幸なりき。又黒江町十三番地湯屋山田友七方 烟突よりも出火(しゆつくわ)し、既(すで)に大事(だいじ)に至らんとするを消止(けしと)めたり。 ●転落(てんらく)して死す 本村町百九番地の鳶人足山仁倉蔵 (四十七) は暴風雨(ぼうふうゝ)の最中小名木川鈴木セメント会社の家根に上り。破損(はそん) の箇所を取繕(とりつくろ)ひ居たるに愈々嗷り狂ふ暴風に吹飛されて逆まに 地上に落ち、頭蓋骨(とうがいこつ)を痛く打しを。実兄なる本所区柳原町三丁 目十九番地山仁萬吉が引取りて。治療を加へしも終に死亡せ り。 ●負傷者 石島町三百重七番地橋本正雄妻チヘ (二十四)及黒 江町廿六番地篠田宗七 (四十五)の二名は負傷せり。 ●洲崎遊廓内の 井筒楼、梅川楼、病院等|破壊(はくわい)し。新築中(しんちくちう)の家屋 一棟全潰樹木の吹折ニ十本なりし。 ●其の他の被害は 墻塀の破壊(はくわい)八十六ケ所、烟突(えんとつ)の倒れ八ケ 所家屋全潰六戸、 (内不住三戸、)半潰二戸、同破損二百三十戸、 倒折樹木(たうせつじゆもく)百廿五本、沈没船(ちんぼつせん)二|艘(そう)同破損一艘、電話線の切断二十 一ケ所、報知機一其他福永橋の勾欄を吹倒し。築造中の高橋北 詰地盤を落し。富川町精米工場百坪余、東元町十四番地石炭納 屋全潰せり。     〇市内の水害 暴風雨(ばうふうう)の当日。市内の浸水(しんすゐ)せる箇所甚た多く。其の害に遇ひし 戸数万余に及へり。今其の大略を左に記述す。 ●麹町区 平河町五丁目、隼(はやふさ)町、紀尾井町、元園町、飯田町通り