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コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百九十九號 明治三十二年十月各地災害圖會(前編之續) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百九十九號 明治三十二年十月各地災害圖會(前編之續) - ページ 14

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【右ページ上段】 部点火せざりしとなり。     〇市内電話線の障碍 電話交換局にては。暴風雨に際し。豫め重なる線路に予防を加 へたれば。電柱(でんちう)の倒れしもの多からさりしも。断線混線等の障(しやう) 碍(がい)は。至(いた)る所甚た多く。不通となりたるもの千二百余名の多き に至(いた)れり。因て同局は七日の夜以来修理工事に従事中なりしが。 八日中には大概開通するに至りたり。     〇品川方面 ●被害総数 品川警察署にて調査せし総被害数を聞くに。住 家全潰二戸、空家同八戸、住家半潰一戸、同破損五百八十五戸、 空家半潰七戸、床上浸水住家百九十七戸、床下同七百八十八戸、 空家床下十四戸、田地同二十九町八反八畝歩、畑同百九十五町 三反歩余、宅地同百十三反畝歩、山林原野同四十二町九反、堤 防破壊七ケ所延長四十四間、石垣崩壊七ケ所、墻塀破損五十三、 樹木転倒五十二、六郷川水量最高点一丈六尺等又た大井村水上 分署の調査は石崖破損十五ケ所延長五十九間、堤防破損二十二 ケ所延長四百八十八間三尺、沈没船四艘、船舶破損一艘、沿岸建 物全潰一ケ所、桟橋破損二十二ケ所、同流失一ケ所等なり。 ●羽田村海に変ず 坂本品川警察署長は七日午後六時頃。六 郷川|増水(ぞうすゐ)して。諸方の堤防破損し。長さ五間以上十五六間に達 するもの数ケ所に及(およ)びしとの急報(きふはう)に接(せつ)したるより。直に非番(ひばん)召(せう) 集(しふ)をなし。橋本警部と共に署員を指揮(しき)して現場(げんじやう)に赴たり。大井 村分署長も前日以来|気象台(きしやうだい)よりの報知(ほうち)に依り。大に沿岸(えんがん)を警戒 し。且巡査四名をして多摩川方面に向け出張せしめたるに。間 もなく堤防(ていばう)の決壊(けつくわい)せし通知ありしかば。直ちに署員(しよゐん)を召集(せうしふ)し。大 森村|居木橋際(いるきばしぎは)まで車を飛して駈付(かけつ)けしに。早や看渡す限り一面 大海の如き有様(ありさま)となりたれば。余義(よぎ)なく徒歩して羽田に達し。 【右ページ下段】 品川署員と水陸(すゐりく)力を協(あは)せ。村役場員及び村民を督し。水防(すゐばう)に尽 力したるが。恰も同堤防は過般来東京府庁に於て修繕中にて。 石、板等夥多積みあるより。府庁(ふてう)の許可(きよか)を得て之を借受(かりう)け。村 民と共に水防を為せし故其甲斐ありて。午前三時頃迄には漸く 四ケ所の堤防(ていばう)を喰止(くひと)めしが。混雑(こんざつ)実に名状す可らざりき。村民 多くは屢々|水害(すゐがい)に遭遇(さうぐう)せる為め。左迄|騒動(さうどう)せず。濁水氾濫(だくすゐはんらん)して 道路一面大海と変じ。甚しきは九尺余の増水にて屋上を浸すに 至れども。平気(へいき)にて二階などに睡(ねむ)り居(を)りたるには。人々|呆然(ばうぜん)た りしといふ。其の後に至り追々減水の模様ある故。両署長共に 警戒方を指揮し置きて。引上げたり。 ●穴守稲荷社水中に没す 羽田(はねだ)の穴守稲荷社(あなもりいなりしや)は。地盤(ぢばん)の低き 為めに同所一面浸水し。近傍何れも床上に達せざるはなく。唯 た海水浴(かいすゐよく)要館のみは。地盤高(ぢばんたか)き故漸く床下(ゆかした)に達せしのみなりし が。水のはけ場なきより。余義なく七日午後五時頃干潮を待ち て。社畔の堤防を破り。其水を海中へ落せしと云ふ。 ●沈没船二艘 神奈川県橘樹郡大師河原千八百八十一番地長 谷川金太郎|所有(しよいう)の大荷足(おほにたり)神明丸は。日本橋区小網町の静岡回漕 店より雑貨(ざつくわ)五百五十五個を積みて。品川沖碇泊の文丸に運送中 当日午後二時頃第四|砲台際(はうだいぎは)にて。風浪(ふうらう)の為め船体(せんたい)を石崖に突当 て。微塵(みぢん)となりて流失せしより。乗組員(のりくみゐん)は砲台に泳着(およぎつ)き。漸く 一命を取止めたりと。次は日本橋区小網町末廣河岸三番地今寺 庄藏所有の大荷足春宮丸は。同町の回漕店八幡屋より雑貨を載 せ。品川沖に碇泊(ていはく)し居たる海龍丸(かいりうまる)へ運送する途次。是れ亦第四 砲台際にて船体に破損(はそん)を生じ。瞬(またゝ)く間に沈没(ちんぼつ)したるが。乗組員 は辛うじて無事なるを得たり。 ●海苔粗朶(のりそだ)の被害 暴風雨にて東京湾内に於ける海苔粗朶は 大半流失(たいはんりうしつ)し。羽根田大森付近殊に甚だしき由にて。其|損害(そんがい)は数 【左ページ上段】 千円に上るべしといふ。同所は元来|海苔採収(のりさいしう)の利益あるより。近 年益借区を拡張し。本年の如きは一層|広大(くわうだい)にし。且|粗朶(そだ)の如き も非常(ひじやう)に高価(かうか)なるに至りしより。随て損害も大なる由聞く。品 川湾海苔粗朶が。今回の如き被害を受けたるは十年以来無き事 なりと。     〇千住方面 ●河原田甫の通行止め 千住荒川筋は八日午前四時三十分頃 より俄(にわか)に増水し。河原田甫の如きは。一|面(めん)の水(みづ)となりて一時通 行止りたれば。同八時頃より官船六艘を出して往復せしめ。非 番巡査水防夫等は。其|近傍(きんばう)に詰切(つめき)りて警戒中(けいかいちう)なるが、午前十一 時には。千住大橋際にて水量五尺八寸なりき。 ●溺死せんとす 八日朝七時頃越ケ谷町二百四十番地相田彌 七 (廿七)と浅草区森下町廿九番地石川米三 (二十七)の両人は。 荷車を挽(ひ)きし侭河原田甫にて。アワヤ溺死(できし)せんとせしが。幸ひ に救助せらる。 ●蘆中に一夜を明す 栃木県河内郡水穂村鮎澤長三郎 (五十 九)は暴風雨の当日煉瓦二千六百本を搭載して。千住大橋際ま で来し時。暴風(ばうふう)に出会(いであ)ひ。其舟沈没せしも。僅(わづ)かに傍の蘆洲に 入りて。材木(ざいもく)に掴(つか)まり一命を全ふせしが。水嵩(みづかさ)の為め陸地(りくち)に寄 る能はず。八日九時頃漸く千住一丁目八百二十九番地恩田某に 救助されたり。     〇新宿付近 ●豊多摩郡の被害 は家屋全潰十四戸、空家全潰十七戸、空 家半潰四戸、家屋破損二十六戸、堤防崩壊一ケ所、電柱倒れ七 本、電話線切断二ケ所、墻壁板塀破損七十六ケ所、樹木倒れ三 百五十六本、新宿警察署構内の警鐘。暴風に吹飛されて。人民 控所の屋上に落ちたるも負傷者なし。大久保村戸山学校内射的 【左ページ下段】 場及び同構内巡査派出所ともに全潰す。     〇南足立郡其の他の被害 ●南足立郡の被害 は潰家三戸、破損七十三戸、便所の破損 十六ケ所、倒木六十六本、空家破損四戸、煙突破損五ケ所、其 他被害少からさりき。●南葛飾郡 潰家一戸、空家破損七戸、 住家破損百三十九戸、浸水家屋四戸、倒木三百六十七本。●北 豊島郡 潰家六戸、浸水家屋一戸、倒家八十二本。     〇府下諸川の増水 今回の風雨(ふうゝ)にて。府下の諸川(しよせん)は漸々|増水(ぞうすゐ)せり。今其筋に到達し たる当時の電報(でんぱう)を列挙(れつきよ)すれば左の如し。      ●七日午前八時四十五分   八王子署発  浅川増水九尺埼玉街道及び五日市街道の通行止る尚ほ増水の  模様      同日午前九時四十五分    青梅署発  午前九時十分多摩川増水二尺八寸五分尚ほ増水の見込      同日午前九時五十分     千住署発  管内荒川筋三尺余増水尚ほ増水の模様なり      同日午前十時三十分     品川署発  只今多摩川矢口渡船場にて八尺六郷橋にて六尺の増水なり危  険の虞れなし      同日午前十一時       府中署発  府中町地先多摩川平水より四尺五寸増水尚ほ追々増水の模様  なり渡船は何れも止む      七日午後四時十五分    八王子署発  浅川今朝より尚ほ一尺を増す      同日午後四時        青梅署発  多摩川五尺五寸の増水となる