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コレクション: STAGE7

風俗畫報臨時増刊第百九十九號 明治三十二年十月各地災害圖會(前編之續) - 翻刻

風俗畫報臨時増刊第百九十九號 明治三十二年十月各地災害圖會(前編之續) - ページ 27

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【右ページ上段】 また一組の怪我人に遇つたさうですが。私は丁度この二番目の 怪我人(けがにん)の組(くみ)の中に居たので。一の瀬は私と行き違ひになって。 あの百姓家へ着きましたので。百姓家で色々の話を聞いて。又 宇都宮へ引き返へして私の入院した神野病院(かんのびやうゐん)へ来て呉れまし た。この時の私の嬉(うれし)さといふものは………………………………  と言ひさして氏は窃(ひそか)に涙(なんだ)を拭(ぬぐ)へり。 病院の怪我人の取扱(とりあつか)ひは如何にも能く行届(ゆきとゞ)いて居りましたが。 何分(なにぶん)私は東京へ帰へりたくて耐(たま)らないので。院長が暫くの間静 にして養生(やうじやう)を仕なくちや良けないと言つて止めるのを。無理に 頼んで。東京へ帰へる許(ゆる)しを受けまして。宇都宮から汽車(きしや)に乗 つて一ノ瀬に介抱(かいはう)して貰つて。八日夜十二時頃に此処へ帰りま したが。着て居りました上衣(うはぎ)だの襯衣(しやつ)は彼方にありますが。大(だい) 分血(ぶち)が付いて居ります。今日これから順天堂病院へ入つて緩り と養生するつもりです。兎(と)に角(かく)命丈助かりましたのは先づ不幸 中の幸福(かうふく)です。云々。  (因にいふ氏は八日宇都宮神野病院を出て附添人(つきそひにん)に看護(かんご)せら  れ同夜十一時頃上野に着し親戚(しんせき)なる前記一ノ瀬方へ帰り翌九  日午前十時順天堂病院へ入院したりと) 又以下の記事は下野新聞社々員が遭難者の直話なりとて其の紙 上へ掲載せしものなり。     ●宇都宮市大工町絹川医院々長絹川久馬四郎氏の      遭難直話 当日(たうじつ)は。臨時病用で依頼になりましたが。アノやうな暴風雨(ばうふうゝ)で ありましたから。色々辞退(いろ〳〵じたい)をしたけれとも。是非(ぜひ)とも今日だけ は勉めても診察(み)て呉れぬと困るといふことでありました。幸ひ に書生が二人|居合(ゐあは)せましたから。其人(そのひと)と同道(どうだう)で出掛けました。 何時もの通(とほ)り二等|列車(れつしや)に乗る積りで参(まゐ)りました。所が二人の書 【右ページ下段】 生も居りますし。旁々(かた〴〵)二等室が混んで居りましたから。寧(いつ)そ何(ど) 処(こ)でも空(あ)いた室(しつ)へ乗らうと思ひまして。後部のブレキバンの室 に行きました所が。幸ひに混んで居りませんから。それへ乗込 みました。二時五十分に乗込(のりこ)む積(つも)りて行つた所が。上りの列車 は五十分程|遅延(おくれ)ましたから。宇都宮駅に五十分間待ちまして漸 く発車(はつしや)することゝなりました。ところが倍々暴風雨(ます〳〵ばうふうゝ)で、何分気 が進みませぬ。ドウカ今日(けふ)だけは途中から辞しても帰(かへ)りたいと 思(おも)つて。相談(そうだん)しましたが。無理遣(むりや)りに引つ張られて行つたやう な訳(わけ)です。駅(えき)に着く毎(たび)に水の出ることを虞(おそ)れまして。若し先方 へ達(たつ)した時分に帰れんやうな機会(とき)に遇ふと。非常(ひじやう)に患者の迷惑(めいわく) もあります事ゆゑ。ドーカ爾云ふ憂ひのないやうに途中から帰 らうと思つた事は。再三でした。矢板駅(やいたえき)辺から倍々暴風烈(ます〳〵ばうふうはげ)しく なつて来(き)て。少しでも車窓(まど)を開けることか出来ない。室の天井 の戸が。時々|暴風(ばうふう)の為に吹き剥(はが)されるので。駅に着く毎に車掌 が屋根に蓋をするやうな訳です。其の時分も激風であつて。進 行するに随つて丁度(ちやうど)矢板駅を通過(とほりこ)して隧道(とんねる)を出て箒川の手前の 巌窟を通(とほ)り抜(ぬ)けやうとする時分(じぶん)には。恰かも烈風劇(れつぷうはげ)しく。岩(いは)を 汽車(きしや)が出抜けやうと思(おも)ふ頃。何無心(なになし)に川の水(みづ)を視(み)やうと思つて 車窓を二ツばかり開たのです。左の方は風が強いから右の方を 開たのですナ。アノ巌窟(いはや)を出る、暴風が来るといふやうな訳で。 丁度汽車と風が三角形に衝突(しようとつ)したらうと思(おも)ふですな。ト、汽車 の速力と重力で。罐(かま)は二ツあつたものですから重量も余程あつ て進行も可なり烈(はげ)しかつたから。私が想像(さうぞう)するに其の罐が稍々 彼方(むかう)の岸に達したらふと思ふ頃。暴風の為に中央の客車から振 落(おと)された。それから将棋倒(しやうぎたほ)しに順繰(じゆんぐり)に河中(かちう)に顛覆(てんぷく)されたです。 で前方の客車(はこ)は悉く微塵(みぢん)になつて姿(すがた)が見えないやうになつて仕 舞つた。前方の客車が落ちる時分にはニ三度ドタ〳〵といふ音 【左ページ挿画】 【上段説明:右から左へ横書き】 宇都宮停車場前小袋町通混雑の図 【下段図中に説明】 宇都宮 停車場 にて惨死 者を輸 送するの 図