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【右ページ上段】
工兵は同夜岩淵まで引揚け。翌日午後一時発の汽車にて。帰営
の途(と)に就きたり。堀割の成績(せいせき)は頗る奇功(きこう)を奏(そう)し。大に減水(げんすゐ)し
たれば。汽車も線路(せんろ)の復旧工事(ふくきうこうじ)と共に漸次開通し。湖底(こてい)に埋没(まいぼつ)
せられたる鈴川も。鱗族(りんぞく)のすみかを脱かれて。依然たる鈴川駅
に復したれば。四民始めて安堵の思ひをなし。軍隊の功を賛美せ
ぬものなかりし。
●鉄道線路の復旧工事
鈴川停車場附近は。鉄道線路も一時水中に没し去りたる事にし
あれば。全(まつた)く減水し去るまでは。到底手を着くべきの道なけ
ればとて。其のまゝに差置き。沼川鉄道以西の。線路決潰の部
分に向つて。専ら復旧工事に従事し。沼津停車場より一日四回
貨物車を九十七哩の処まで運転(うんてん)し。(九十七哩の処には。在来
の堤防(ていばう)一 条(てう)。蜿蜒田圃中に横はりあるが為め。さしもの水勢も
其処(そのところ)より此方へは浸水し来らず。且(か)つ堤防(ていばう)の切れ目なる線路上
へは。早くも土俵を積み上げて水を防ぎ。罹災を免かれたり。
其の土俵際まで貨車の運転を為すを得るなり。)其処より小船に
搭載して。工事の場所まで一切の材料(ざいれう)を運搬(うんぱん)することとなし。工
事監督の為め新橋停車場より技師数名出張し。事務所を数ヶ所
に設(まう)けて。日夜工夫(にちやこうふ)を督励したり。浸水排除工事は別項に記す
るが如く。工兵(かうへい)の力(ちから)を待て。追々歩を進(すゝ)めしかば。十二日の
午前には。既に鉄道線路下一尺迄に減水したるを以て工事大に
捗取り。同日午後零時三十分新橋発。即ち沼津午後五時四十分
発の列車より全通するに至りぬ。
◎千葉宮城両県下の激浪
今回の海嘯たるや。当日の暴風雨といひ。激浪昂騰し。沿海の
地は。多少損害を免かれじ。被害の状況を左に揚ぐべし。
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▲千葉県下の激浪 七日暴風雨の際千葉県下にても。沿海の
地殊に被害甚(ひがいはんはだ)しく。房州全沿岸、夷隅郡、勝浦町附近及び海上
郡浦賀村の如きは。激浪に襲はれて。死者十五人、負傷者百四
十人。行衛不明(ゆくゑふめい)九人、家屋全潰九百六十三戸、半潰四百九十二
戸、流失二百三十四戸、破損八千四百六戸、浸水(しんすゐ)四千六百十戸
堤防決壊(ていばうけつくわい)及び破損(はそん)五十九箇所、此間数三千三百七十七間、道路の
埋没(まいぼつ)流失及び、破損(はそん)三十三箇所此 延長(ゑんてう)三千四百五十九間、橋梁
の流失及(りうしつおよ)び破損(はそん)十六箇所、土地浸水(とちしんすゐ)九百十五町、宅地流失二十
七箇所、墻塀石垣(しやうへいゝしがき)の破損(はそん)千八百十七箇所、電柱顚倒及挫折二十
本船舶流失二百十五艘、破損五百四艘、山崩十一箇所、波止場破
損七箇所等なりと云ふ。
▲宮城県塩釜町の激浪 塩釜町にては。七日午後三時半頃暴
風雨と共に。沿海(えんかい)の海水満潮(かいすゐまんてう)に際し。三尺余高まり家屋の浸水せ
るもの殆んど三百余戸に及びたるより。同町民の驚愕(けうがく)一方なら
ず。何れも必死となりて之が防禦(ばうぎよ)に力(つと)め。幸(さいは)ひに甚しき被害な
きを得たるが只倉庫会社運送店及び白石及川佐々木等数名の倉(そう)
庫内貨物(こないくわぶつ)は七八千円の損害あらんと同地よりの通信に見ゆ。
●守田宝丹の三脈の法 長坂信寛 (《割書:血槍九郎の|孫なりとか子》)といへる人あ
り。日鉄の列車に乗込みしが。途上三脈の乱たるゝより。宇都
宮に下車したる為め。危難を免かれたりと。宝丹翁より報道の
侭。記載し置く。
●正誤
箒川の事件に付、都新聞等には、近藤競四郎を以て、
本誌の主筆とあれど、仝人は主筆にあらず、編集部
の一人たるに過ぎざれば、爰に正誤す。
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高等化粧料発売広告
●《割書:高|等》化粧水オイデルミン 《割書:一箱三個入|金七十五銭》
皮膚(ひふ)を艶美(ゑんび)滑沢(かつたく)ならしむる高等(かうとう)の化粧料(けしやうれう)なれば貴婦人令嬢(きふじんれいじやう)
方(がた)の必要品(ひつえうひん)にして暑中是(しよちうこ)れを用(もち)うてば日(ひ)に焦(や)ける憂(うれひ)なし
●《割書:改|良》びん付 《割書:コラキシ|玉 椿》 《割書:一 本|金二十銭》
●《割書:改|良》すき油 《割書:メラゼリン|柳 糸 香》 《割書:一箱三個入|金一円五十銭》
婦人髪結(ふじんかみゆひ)に用(もち)うる油(あぶら)は蠟製(らふせい)なるが故粘着汚垢(ゆゑねんちやくをこう)し易(やす)く加之(しかのみならず)
一 種(しゆ)の悪臭(あくしう)をかもし常(つね)に人(ひと)をして苦心(くしん)せしむ欧米婦人曾(おうべいふじんかつ)て
言(い)へる事(こと)あり日本婦人(にほんふじん)は柔和優美(にうわいうび)の徳質(とくしつ)ありて寔(まこと)に親(したし)むべ
しと雖(いへど)も頭髪(とうはつ)に一種(いつしゆ)の臭気(しうき)ありて鼻(はな)を衝(つ)き久(ひさし)く座(ざ)に堪(た)へざ
らしむるが遺憾(ゐかん)とすと実(じつ)に然(しか)り弊舗茲(へいほこゝ)に感(かん)あり辛苦研究(くしんけんきう)の
結果優美(けつくわいうび)の油(あぶら)を発売(はつばい)す
●《割書:ふけ|とり》香水 《割書:ラウリン|花たちばな》 《割書:一箱三個入|金一円八十銭》
第(だい)一 剛(こわ)き毛髪(もうはつ)を柔軟(じうなん)ならしめ且汚(かつけが)れを清(きよ)め永(なが)く清潔(せいけつ)の状(じやう)を
保(たも)たしむ
●《割書:改|良》水油 《割書:オイトリキシン|花 か つ ら》 《割書:一箱三個入|金一円二十銭》
在来(ざいらい)の香油(かうゆ)の如(ごと)く髪(かみ)に粘(ね)ばりを生(しやう)ぜず亦汚臭(またをしう)を発(はつ)ぜず毛髪(もうはつ)
の光沢(つや)を艶美(ゑんび)ならしめ且脱落(かつだつらく)を制止(せいし)し頭皮(とうひ)の疾患(しつくわん)を予防(よばう)す
●《割書:あか|とり》香油 《割書:アネモシン|春 風 山》 《割書:一箱三個入|金一円二十銭》
第(だい)一 頭髪(とうはつ)の汚(よご)れを容易(ようゐ)に梳(す)き去(さ)るが故(ゆゑ)に本品(ほんひん)を使用(しよう)せば髪(かみ)
を洗(あら)ふの煩労(わづらひ)なし故(ゆゑ)に病中又(びやうちうまた)は病後(びやうご)に用(もち)ゐて妙(みやう)なり
【左ページ下段】
●ひげ油 《割書:フロネミン|住之江》 《割書:一箱三個入|金九十銭》
髭毛(ひげ)に使用(しよう)すれば之(こ)れに適当(てきたう)の粘力(ねんりよく)を生(しやう)じ随意(ずゐい)に形状(けいじやう)を保(たも)
たしめ且在来(かつざいらい)の品(しな)と異(こと)にして之(こ)れを洗去(あらひさ)ること容易(ようゐ)なり
●《割書:改|良》おしろい 《割書:イリアンチン|春 の 雪》 《割書:一箱三個入|金二円十銭》
●《割書:高|等》ねりおしろい 《割書:一箱三個入|金七十五銭》
品質純白緻密(ひんしつじゆんはくちみつ)にして皮膚(はだ)に附(つ)き易(やす)く且佳良(かつかりやう)の芳香(はうかう)を有(いう)し衛(ゑい)
生上有益(せいじやういうえき)の佳品(かひん)なり
●うがひ水 《割書:エチオン|しのゝめ》 《割書:一箱三個入|金九十銭》
口腔(くち)を清潔(せいけつ)にし粘液(ねんえき)を去(さ)り臭気(しうき)を防止(ばうし)す黴菌(ばいきん)を撲滅(ぼくめつ)し虫歯(むしば)
を予防(よぼう)す出血(しゆつけつ)し易(やす)き歯茎(はぐき)を固(かた)む咽喉加答児(ゐんかうかたる)を癒(なほ)す一名水は
みがきとも云ふ
●《割書:福原|衛生》歯磨石鹸 《割書:煉製金廿五銭|同 金十五銭》 《割書:粉製|袋入》金 《割書:十五銭|三銭》
衛生歯磨(ゑいせいはみがき)は口中(こうちう)の黴菌(ばいきん)を撲滅(ぼくめつ)するの効(かう)あるが故(ゆゑ)に伝染病予(でんせんびやうよ)
防(ばう)として一 日(にち)も欠(か)くべからざる良品(りやうひん)なり
以上各種の化粧料は医科大学教授理学博士
長井長義先生の考案により今般弊堂に於て
製造販売せるものにして其品質の良好其体
裁の優美なる真に高等化粧料の名に背かざ
るは弊堂の深く信ずる所なり江糊の紳士貴
婦人令嬢諸君普く御愛用の上高評を賜らん
事を願ふ
東京市京橋区出雲町 (電話新橋三二四番)
内外化粧品問屋資生堂 福原有信