翻刻
【右丁】
置 図(づ)の如(ごと)く是を標(めじるし)に若(わか)き蚕の
未眠(いまだねむらざる)を細き箸(はし)にて拾(ひろ)ひ取又 眠(ねむり)し
蚕は高き所へあげ置 己(おの)が侭(まゝ)に衣(きぬ)を
脱(ぬ)ぎ起上(おきあが)らすべし能(よく)起揃(おきそろ)ふを見
て桑を喰(くは)すべし又 標(めじるし)なく拾(ひろ)ふ
時は虫(むし)の数(かす)多き故 目紛(めまぎ)れして
拾(ひろ)ひがたし故(ゆへ)に印(しるし)を付置(つけおく)なり
四 度(ど)の居起(ゐおき)右に同じ兎角(とかく)一様(いちやう)
に揃(そろ)ふ様に気(き)を付べし最初(さいしよ)の
獅子(しし)の居起(ゐおき)より《割書:此を中国にては|一ツの居起と云》鷹(たか)の
眠起(ねふりおき)《割書:是を二ツの|居起と云》船(ふな)の居起迄右の網(あみ)を
【左丁】
もって揃(そろゆ)る時は庭(には)の眠(ねふり)には悉(こと〴〵)く能(よく)揃(そろ)ひ取扱(とりあつか)ひに手間(てま)入らず奇妙(きめう)なるべし平生(へいぜい)随分(ずいぶん)
薄飼(うすがひ)にすべし厚飼(あつがひ)にすれば虫(むし)少(ちいさ)くして繭(まゆ)も小きを作(つく)るべしまゆ小(ちいさ)ければ
糸(いと)細(ほそ)く糸口(いとくち)よはくして糸目(いとめ)少(すくな)し随分(ずいぶん)沢山(たくさん)に桑を喰(くは)せし蚕はまゆ
大ふりにして糸 正味(しやうみ)至(いたつ)て多し
蚕棚(かひこだな)立様(たてやう)并(ならびに)蚕 風(かぜ)を嫌(きら)ふ事
蚕棚(かひこだな)は国々(くに〴〵)にて色々(いろ〳〵)の仕法(しはふ)あり其国の勝手(かつて)宜敷(よろしき)に随(したが)ふべし先(まつ)藁家(わらや)なれ
ば破風(はふ)に大成(おほきなる)窓(まど)をあけ戸(と)の開閉(あけとぢ)自由(じゆう)にすべし所々(ところ〴〵)に風(かぜ)ぬきの穴(あな)を明(あけ)置て
雲(くも)のかよひを見時々 戸(と)ざしの加減(かげん)すべき事 第(だい)一なり元(もと)より蚕はくらき所(ところ)を好(この)む
陰虫(ゐんちう)なり戸(と)をあけば蚕の居(ゐ)る所は闇(くら)くなる様にして遠(とを)きより風(かぜ)廻(まは)り入様に
すべし別(べつ)して幼飼(おさなが)ひの時 板(いた)の間(ま)にして養(やしな)ふ事 甚(はなはだ)悪(あし)し板(いた)の湿(しめ)りかひこに
障(さは)り居(ゐ)うらにかびなど出来(でき)る事あり莚様(むしろやう)の物にても敷(しく)べし
【右丁図中】
松(まつ)ぶたに蘂(しべ)
を置(をき)獅子(しし)
眠(ねふり)の蚕(かひこ)撰(ゑり)
分(わく)る図
我まゝに
這はて
飼るゝ
桑蚕
かな
闌更#1