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【右丁】
戸廻(とまは)り風の出入程よく加減(かげん)を
し或(あるひ)は家内(かない)所々(ところ〳〵)に火(ひ)を焼(たき)
昼夜(ちうや)秘術(ひじゆつ)をつくし育(そだて)ける
に諸国(しよこく)の蚕は弐 歩方(ぶかた)もなく
不作(ふさく)せし故桑は沢山(たくさん)下直(げじき)にて
糸(いと)は至(いたつ)て高直(かうじき)なり此人は常(つね)に
替(かは)らぬ上作(じやうさく)して思ひのまゝに
利徳(りとく)を得(え)しとかや是 平生(へいぜい)
養蚕(やうさん)の道(みち)に心を委(ゆだね)しに
よりかゝる功者(こうしや)の出来(でき)しなり
但(たゞ)し平生(へいぜい)は炭火(すみび)悪(あし)しといへり
【左丁】
蚕(かひこ)盛(さかん)の時分(じぶん)霖雨(ながあめ)を凌(しのぎ)たる例(れい)の事
或年(あるとし)蚕 船(ふな)の時分(じぶん)より庭(には)の起(おき)まで日毎(ひごと)に大雨(おほあめ)降(ふり)つゞき殊(こと)に冷風(れいふう)はげしく
諸国(しよこく)蚕大きにいたみし事あり其時 或里(あるさと)に養蚕(やうさん)功者(こうしや)の人ありて家内(かない)三所(みところ)程
火(ひ)を焼(た)き蚕の有(ある)所 能(よき)程に陽気(やうき)を廻(めぐ)らし千変万化(せんへんばんくわ)して養(やしな)ひけるに雨(う)
湿(しつ)に痛(いた)まず其村壱番の上作せり後(のち)に此 手段(しゆたん)を聞(きく)人 皆(みな)感(かん)じけるとかや
同 暑気(しよき)を防(ふせ)ぎし例(れい)の事
あるとし蚕 庭前(にはまへ)より殊外(ことのほか)暑気(しよき)つよく南風(ようず)#1にてほめきしかば国々(くに〳〵)蚕大に
痛(いた)みし事あり或所(あるところ)の老人(らうじん)いたつてかしこき人なるが此 暑(しよ)は格別(かくべつ)ながきこと
にもあるまじと思案(しあん)をめぐらし大戸口(おほとぐち)に唐箕(たうみ)を出し外(そと)より内(うち)へ向(むけ)て風を
入れしかば此人の蚕は少しも暑(しよ)にいたまず上作せしとなり
又 或年(あるとし)庭起(にはおこ)りより暑気(しよき)はなはだしく人も身を持(もち)かぬる程のことありし
【右丁図中】
関東流(くはんとうりう)
籠飼(かごかひ)の
図(づ)