翻刻
【右丁】
かば彼(かの)唐箕(たうみ)にて暑(しよ)を
凌(しのぎ)し例(ためし)をおもひ兼(かね)て
大 団扇(うちは)七八本 拵(こしらへ)置しを
もつて毎日(まいにち)家内(かない)蚕棚(こだな)の
間(あひ)をあふぎ廻(まは)りしかば
蚕少も痛(いた)まず上作
したり此人 志(こゝろざし)よき人にて
近郷(きんがう)迄も人を廻し此 仕(し)
方(はう)を教(おしへ)けるに何(いづ)れも上作
せしとなりかやうの事は
平生(へいぜい)心得 居(ゐ)べき事也
【左丁】
庭(には)の居起(ゐおき)手入れの事
蚕 庭(には)の眠前(ねふりまへ)にならば桑(くわ)を沢山(たくさん)
にあたへ不断(ふたん)蚕桑にはなれぬ様
にすべし此時よりは桑(くわ)を喰(く)ふに
随(したが)ひ厚(あつ)くあたへ喰(くは)すべし最初(さいしよ)
掃立(はきたて)の時分(じぶん)とはちがひ陽気(やうき)もつ
のるべし格別(かくべつ)暑(あつ)きと思はゞ四方(しはう)
の戸(と)を開(あ)け少し風を入 程能(ほどよく)
加減(かげん)すべし併(しかし)蚕の居(ゐ)る所は
くらくなる様にし雲(くも)のかよひ
を見てかけ引(ひき)すべし又 夕日(ゆふひ)の
【右丁図中】
桑(くわ)の露(つゆ)
おとす図(づ)
【左丁図中】
人に疎し
蚕かひの女
賢ならん
暁臺#1
信州辺(しんしうへん)
蚕棚(こだな)の脚(あし)に
車(くるま)を仕(し)かけ
出し入 自由(じゆう)
にする図