翻刻
【右丁】
はづし取(とり)器(うるは)に入れ風(かぜ)に当(あて)べし
七八日 過(すぎ)ば日南(ひなた)に干(ほし)つけ中(なか)の
蛹(すた)をいため出(いで)ざる様にすべし又
雨天(うてん)ならば早(はや)く炭火(すみひ)をおこし
焙爐(ほいろ)に入 中(なか)の蛹(すた)をいため出(いで)ざる
様にすべし扨(さて)最初(さいしよ)蚕の掃立(はきたて)
より千辛万苦(せんしんばんく)して漸(やう〳〵)繭(まゆ)作(つく)る
頃(ころ)に至(いた)り誤(あやまつ)て手入(ていれ)の麁忽(そこつ)出(で)
来(き)なば今迄の勤(つとめ)忽(たちまち)水(みづ)の泡(あは)と
消(き)へ莫太(ばくたい)の損失(そんしつ)成(なる)べし能々(よく〳〵)
心得べきなりつれ〳〵草(くさ)に云
【左丁】
高名(かうみやう)の木のぼりといふもの人の
高(たか)き木(き)にのほりてやがておりん
とするを見て今(いま)纔(わづか)になりし時
危(あや)うきぞ過(あやまち)すな〳〵といふに
かたへの人 訝(いぶが)りてさしも高(たか)き
所に上(のぼ)り居(ゐ)る程は何(なに)ともいは
で纔(わづか)になりでかくいふは心得(こゝろえ)
ぬ事かなといふ彼(かの)高名(かうみやう)のいふ
されば高(たか)き所に居(ゐ)たらん程は
めくるめき足(あし)わなゝき己(おのれ)も誠(まこと)
に危(あやう)しと思へば我(わが)いふ迄(まで)もなし
【右丁図中】
江州(こうしう)流 つり棚(だな)の図
さゝ波や
蚕飼
涼しき
自在棚
鵞少
【左丁図中】
江州流(こうしうりう)
藁苞(わらつと)に
蚕(かひこ)を入
まゆ
作(つく)らす
図