翻刻
【右】
のなり就中(なかんづく)日(ひ)を経(へ)て腐(くさ)りたる魚(うを)、経日(ひまし)の蝦蟹(えびかに)、牡(か)
蠣(き)、貝類(かひるゐ)などは最(もつと)も危(あやう)し殊更(ことさら)炎暑(えんしよ)の時候(じこう)暖気(だんき)の
土地(とち)等(とう)にては右(みぎ)の如(ごと)き貝類(かいるい)蝦類(えびるい)の新鮮(あたらし)からざ
るものを食(しよく)して即日(そのひ)に大病(たいびやう)を發(はつ)すること屡(しば〳〵)多(おほ)し
此他(このた)通常(なみ)の魚類(うをるゐ)にても日(ひ)を経(へ)たるものは霍亂(くわくらん)
を起(おこ)すことあり慎(つゝひ)み警(いまし)めざるべからず今(いま)左(さ)に飲(いん)
食(しよく)に付(つ)き用心(ようじん)の要領(あらまし)を列記(かきの)すべし
<第一>死魚(しにうを)の悪(あし)き臭(くさみ)ある腐(くさ)りたるものは食(く)ふべ
からず
病魚(びやうぎよ)みて其肉(そのにく)輭(やはらか)に弾力(しまり)なきものは食(く)ふべから
【左】
ず
藏鮞(こもち)の魚(うを)は成(な)るべく食(く)はぬを良(よし)とす
<第二>干魚(ほしうを)の悪(あし)き臭(か)なるもの黴を生(しやう)じたるもの
腐(くさ)りたるもの蟲(むし)を生(しやう)じたるものを食(く)ふべから
ず
<第三>鹽魚(しほうを)の輭(やはらか)にして豆腐(とうふ)に触(ふ)るゝが如(ごと)きもの
悪(あし)き臭(か)又(また)は一種(いつしゆ)鼻(はな)を撲(う)つ臭気(くさみ)あるものを食(く)ふ
べからず
<第四>牛乳(ぎうにく)其他(そのた)の獣肉類(けものゝにくるい)は其(その)獣(けもの)の無病(むびやう)にて其(その)肉(にく)
の新鮮(あたら)しきものにあらざれば食(く)ふべからず若(も)