翻刻
【右】
立入(たちい)らざる様(やう)になし又(また)其(その)吐瀉(としやあぶつ)には充分(じうぶん)に消毒(せうどく)
して手落(ておち)なき様(やう)にするが一家(いつか)の豫防(よぼう)にて此(この)二項(ふたかど)
の目的(めあて)を尽(つく)しなば外(ほか)に豫防(よぼう)はなきことなりされど
も其(その)家(いへ)貧窮(ひんきう)にて看病(かんびやう)すべき人(ひと)もなく又(また)看病(かんびやう)をな
きときは其(その)日(ひ)の稼(かせぎ)に差支(さしつか)へ或(あるひ)は老人子供(としよりこども)ばかり
にて手当(てあて)も届(とゞ)かず又は人数(にんづ)多(おほ)くして間数(まかず)少(すく)なき
者杯(ものほど)は所詮(しよせん)前(まへ)の二項(ふたかど)を充分(じうぶん)仕遂(しと)ぐること能(あた)はず
此等(これら)の人(ひと)の心(こゝろ)にはあはれ善(よ)き看病人(かんびやうにん)のありたら
ば介抱(かいほう)も届(とゞ)きつらん好(よ)き病室(びようま)のありたらば家族(かない)
にも遷(うつ)るまじと思(おも)はぬ者(もの)はなかるべし又(また)旅籠屋(はたごや)
【左】
に泊(とま)り学校(がくこう)製作場(せいさくば)杯(ほど)に寄宿(きしゆく)して身寄(みより)朋友等(ともだちとう)の引(ひき)
取人(とりて)なき者(もの)は其(その)家(いへ)の迷惑(めいわく)となり業體(げふてい)にも差響(さしひゞ)き
本人(ほんにん)の身(み)になりては如何計歟(いかばかりか)居(を)りづらく思(おも)ふべ
く又(また)は旅人(たびゝと)の途中(とちう)にて発病(はつびやう)したる其(その)時(とき)は世話(せわ)す
る人(ひと)もなかるべし かゝる者(もの)の為(ため)に避病院(ひびやうゐん)を取建(とりたて)
て其(その)難儀(なんぎ)を救(すく)ひ親切(しんせつ)に世話(せわ)せよとて設(もう)けられた
る規則(きそう)なれば此等(これら)の人(ひと)は願(ねが)ひては入院(にふゐん)をなすべ
き筈(はづ)なりたるを兎角(とかく)に畏(い)み嫌(きら)ひ取留(とりとま)らざる妄説(まうせつ)
に惑(まど)ふは謂(いは)れなきことにて其(その)身(み)は勿論(もちろん)家族(かない)まで
誘(さそ)ふて殺(ころ)す者(もの)を謂(い)ふべし入院(にふゐん)すれば療治(れうぢ)も出来(でき)