翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

難船人帰朝記 - 翻刻

難船人帰朝記 - ページ 4

ページ: 4

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  五左衛門を残し置尤三人の者共水を尋に行船付之処より四五十間程行岩の   上に溜り水有三人共順に呑み残し置たる両人を連行て飲す久し振りにて   口を潤し渇を凌く此所より巽の方十間斗の処に岩穴有てこゝへ重介   五左衛門を置三人人家なからんかと見合に行に何も見へす兎角する内に   日暮になり掛り地方に而落くると呼大鳥夥敷居り少も人を恐れす   近寄て二三羽打殺し二羽其処に残し置一羽取帰り皮を剥き寅右衛門   試に喰に甚美味と云夫より伝蔵万治郎一同に給べ岩穴へ持行両人   に喰せともに飢を凌く其夜は五人抱合て夜を明す 一 同十五日朝二羽置残したる鳥を万治郎取に行に皮斗り有て肉なし   そのよし帰り一同へ告置て□に引返し行て五羽打殺し取帰り皆々喰ふ   此暮船かす浪に打上ケ来るを取て岩穴の内へ寝所を拵へ着用等を敷て   寝卧に火もなけれは彼鳥を生にて喰するに能〳〵身體応する哉   食傷の障りもなくて露命をつなく     此島廻り三十六丁斗りにして山の高さ五十間斗惣体しの茅生茂り樹木     生せす我浦辺にてシヤシヤブと云木少しつゝ有之又かくの鳥三月頃子     をかへし同末頃より巣を立親鳥共に飛去りて見へす 一 岩穴の口は巽うけにて穴の口の岩上より水こち〳〵落る処有り其所へ水桶を置   水を溜て飲水とす在島中三ケ月程雨降らす水に渇く岩のしめりたる処へ   口を付て廻りに吸こる抔大に迷惑難儀仕たる事もあり此節渇に堪かねて小便を   呑たる事もあり 一 三月頃島より千里斗沖合に大船の通るを見受夜明頃物を揚けるれ共   見へさるにや過ぬ ● 四月頃かの鳥不居様になり磯貝抔とりて食物とす其後空より鳥の飛   下り又飛上る様子を遥に見付伝蔵万二郎と咄合鳥の居る所を尋ね   山へ登る伝蔵は道悪しくとて中途より帰て万二郎独り登り見るに山の上   には平地有りて石の積上たる所有りふしんに思い其辺見合けれと人影も   見へす右積上たる石を取たる跡と見へて堀くほめたる所有雨あかりには水   ありと見へ此所鳥も居れ□十二羽打殺して万二郎取帰り四人の者大に悦又   替〳〵捕に行て日々食とす此前より重介帯下の持病起りて始終穴の中   に平卧せり      此島に有中日々之事其変り事なけれは委く記さす在島中      百七十日なり 一六月三日頃と覚へ巽の方へ当りて白帆遥に見ゆ皆一同に其船寄り来候様にと   神仏を一信に祈り願立す昼頃右の船五里程の処へ寄懸れ共風直すして南   西の方へ廻り山の崎へ隠れてみへずなりぬ皆々力をおとし最早此島にて死る也   と打嘆く万二郎より五左衛門に相談して右の船居哉南西の方へ着んも知れ   す見に行かんといへは五左衛門うけかはす【肯はず】万二郎壱人見に行に拾丁斗り山を廻れ   は白帆二つ見へ近つく体なれは大に悦び立帰り一同へ告置て直に行五左衛門