翻刻
「右帖」
あらまし物と泪にくれ古郷の道も
見へわかず同年来の六日の夜筑前の
唐泊り浦に着にけり 扨又仙台の
沖にてふき流されし節残の嶋
村丸と云船是も同しく難船し
是は唐の国にぞ着にけり爰は人の
心やさしくて殊の外馳走抔して
弐拾人の人々皆仕合たる者也なれ共
「左帖」
二三人は病死す有る時には唐人共
腕(うで)押し枕引き棒ねぢ等たわむれ日本
人ゟは初手の内は力よわき者を出し
唐人共勝てば悦ぶ事限りなし
後は次第に力つよき者を出し其
内にも三人は殊の外 腕(うで)先きつよき
唐人共は壱人もかたずどふでも
日本に逢ふては叶わさるとぞ申しける