翻刻
「右帖」
迚先夫迠にあがりやにとて桜町籠や
の招き四畳の間にこそ住居けり去
程に同年の八月に江戸ゟの御免を
承り奉り 御公儀様ゟ我れを積み
来り阿蘭陀に御褒美として銅弐
千斤を被下猶又筑前の太守様ゟも
八ケ木弐拾石を給りけると也厚き恵の
御代にあいて難有泪こぼれけり早
「左帖」
国元にかへらんと延びたる髪を元服し
乗りも習わぬ駕に乗り荷物も不残
我に給はり古郷の方に急けり天より
降りし我命とおもへは嬉しさかなしさ
は死して地獄の責苦(せめく)にもいかでを
とるまじ我身壱ツを元の身にして
古郷の人々問をならば何と答へん
云(こと)の葉をちりなばかゝる物思ひ