翻刻
の良習(ヨキクセ)を馴致(ジユンチ)するに至(イタ)るなり
瀧(タキ)に打(ウ)たするは血液循環(チノメグリ)を助(タス)くるとの解凝(コリヨトク)との為(タ)めなれども
過度(ウタセスゴス)なれば却(カヘツ)て害(ガイ)あり且(カ)つ頭部(ツムリ)は強(ツヨ)く打(ウ)たすなかけ時間(ジカン)の
長(ナガ)きも害(ガイ)あり頭(カホ)、胸(ムネ)、腹(ハラ)、背椎(セナカ)、脈(ミヤク)、及(ヲヨ)び痛(イタ)みある所(トコロ)局は必(カナラ)ず打(ウ)たす
なかけ爲躰中何(カラタノウチイツ)けの部(トコロ)分を論(ロン)ぜず瀧(タキ)に打(ウ)たせんと欲(ホツ)せば先(マ)
づ手巾(テノゴヒ)を二三重(ニサンヂウ)に疂(タヽ)み其部(ソノブ)に敷(シ)きて打(ウ)たすべし患者(クハンシヤ)の鉱泉(ヲンセン)
治療(チレウ)を始(ハジ)むるに当(アタ)り或(アル)ひは其(ソノ)病勢(ヤマヒ)の元進(カラシン)するが如(コト)き景況(モヤウ)あ
るも決(ケツ)して周章畏懼(シウシヤウイク)【アハテオソル】するなかれ此(コノ)変症後却(カはリアルノヽチカヘツ)て本患(ヤマヒ)の漸(モタイ)々軽(コヽロ)
快(ヨキ)に赴(ヲモム)くことありとはウオルトン氏(シ)の断言(タンゲン)する所(トコロ)にして本(コノユ)
泉に於(ヨヒ)ても屡(シバ〳〵)実験(コヽロミ)ある所(トコロ)なり只(タヾ)其(ソノ)際(サイ)医(イシ)の診断(シンタン)を受(ウ)け内服(ユヲノミ)分(ユニ)
浴(イル)とも暫(シバラ)く其(ソノ)度量(ドりヤウ)を減少(ヘラ)し或(アルヒ)は休(ヤスミ)て足(タ)れりとす是(コ)れ患者(クワンジア)の
豫(カネ)て知(シ)らざるべからざる所(トコロ)なり現浴中(ユニアルウチ)顕効(ケンコウ)を奏(ソウ)するあり亦(マタ)
否(シカ)らずして帰郷(カヘリ)の後(ノチ)初(ハシ)めて其(ソノ)効(シルシ)を見るもあり患者(クワンジヤ)の素質(ラマレツキ)に因(ヨ)るものなり病(ヤセヒ)
を温泉(ヲンセン)に養(ヤシナ)ふ者(モノ)は其鉱水現患(ヲンセンヤマヒ)に適?(テキ)するや確然判知(クワクゼヽハンチ)【タシカニワカル】するまで
は必(カナ)らず一所(ヲナジ)に留(トヾマ)りて彼是移転(カレコレイテン)す可(ベカ)らす或(アルヒ)は時々軽躁(トキ〴〵カルハツミ)にし
て甲泉(カウセン)より乙泉(ヲツセン)に乙泉(ヲツセン)より丙泉(ヘイセン)に移(ラツ)り一所(ヲナジ)に留(トヾ)まること僅(ワツカ)
々一両日(イチリヤウニチ)に過(ス)きざるものあり而(シカ)して其人曰(ソノヒトイハ)く適症(ヤマヒニカナウ)の泉(セン)に逢(ア)
ひば一嚥一浴(ヒトノミヒトユアミ)も以(モツ)て病根(ヤマヒ)を駆除(クジヨ)【カクノワギ】するに足(タ)ると其(ソノ)妄信笑(マワシンワラ)ふべ
しとウオルトン氏(シ)は云(イ)へり同氏又曰(ドウシマタイハ)くトルツリー氏(シ)か鉱泉(ヲンセン)
の效力(チカラ)は長延彌久(ナガクヒサシキ)なりと云(イ)ひしは無據(デタラメ)の言(コトバ)に非(アラ)ざるなりと