翻刻
眼(メ)ノ湯(ユ)《割書:西町| 》同 地籠
此外内湯と称する浴室許多あれとも故あれば之を記さず
白根山 草津より西に方り行程凡そ三里許志武嶺越の中途
より左に別れて登る其高さ海面を抜くこと六千五百尺と
云ふ山頂は凹形にして底に三坑あり中抗常に熱泉沸騰し
烟を噴いて信の浅間山と南北に対峙す駿の富岳を首とし諸
州の山川眼界に入り来り風光明媚佳絶の名勝にして万葉
集上野歌の中に「|等(ト)|保(ホ)|斯(シ)|等(ト)|布(フ)|故(コ)|奈(ネ)の|思(シ)|良(ラ)|禰(ネ)|爾(ニ)|安(ア)|抱(ホ)|思(シ)|太(ダ)|毛(モ)|安(ア)
|波(ハ)|乃(ノ)|敝(ヘ)|思(シ)|太(タ)|毛(モ)|奈(ナ)爾(ニ)|己(コ)|曾(ソ)|与(ヨ)|佐(サ)|礼(レ)」とあるは此白根山なり橋本
真香氏の説に此歌の古体なるを以て推すときは舒明皇極
両天皇の御宇を降らさるへしと云へり
常布之瀧 志武嶺の途上にあり南面にして二層に落下す高
さ凡そ百二十尺其状白布を懸るに方仏たり故に此名ある
か尭恵法師〔《割書:文明長享の頃諸州を漫遊し|て探勝に最も名高き僧なり》〕【〔 〕は原文では( )】の「世にしらぬ布な
らなくに山姫のいかにさらせる瀧の白糸」と読みしは此瀧な
り藤森弘庵氏も亦茲に遊ひしことあり其観瀑の文今に存す
|囲山(カコイヤマ) 本郡郷社白根神社《割書:祭神日|本武尊》の社地にして納涼観月に最
も佳し《割書:本社の神号は一品有栖川宮殿下の御筆なり該社は|古き神社にして上野国神名帳に従一位白根明神と》
《割書:記し|あり》