東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

拳独稽古 - 翻刻

拳独稽古 - ページ 5

ページ: 5

翻刻

人江戸に来りておしひろむ、二十余年の今に至て、 流行四里四方に行わたり、うくつ童(わらべ)より鳩つかむ叟(おきな) まで、あるは八里半(やきいも)の薩摩(さつま)拳(けん)、または杖つく握(にぎ)り手にも、 指の工夫手のかわりに心をつくす、まして此道に遊べる輩(ともがら) 番付に肩をいからせ褌(まはし)に風流をつくす、されは双が岡の 法師も今の世に居なは、拳うたぬ男(おのこ)は玉の盃に底(そこ)なき こゝちとかき、楽天(らくてん)といふ叟(おやぢ)も遥望人家(はるかにじんかを見る)拳(けんあれば)便入(すなはちいる)不論貴(きせんと) 賤与親疎(しんそとをろんせず)、などゝつくるなるべし、こゝに山水と称せる 一つらあり、始はわづかの下露にて、木の葉の股(また)をくゞり盃(さかづき) 浮(うか)める斗なりしも、今や末流(まつりう)大に広がりてやゝ呑(どん) 舟(しう)の魚(うを)をも生(せう)ぜんとす、其ひとむれの名に縁(えん)ある、山 桜 漣々(れん〳〵)なるもの、此流行につけこみて拳道初学 の階梯(かいてい)にもと、今古(きんこ)名たゝる大人(うし)達(たち)の茶話(ちやのみばなし)を集て、 独(ひとり)稽古(まなひ)と号(なづけ)たり、例(いつも)の朝寐(あさね)の眼(め)をこすりて、ろく〳〵 中をはくりかえさねど、えより漣(ぬし)々の筆力(ひつりよく)は、先刻(せんこく)承(せう) 知(ち)の事なれは先妙〳〵とうむるるならん、しからは一寸 開巻(かいくはん)